教育推進機構長あいさつ
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佛教大学のFDの方向性
教育推進機構長 岡﨑 祐司
佛教大学のFD
FDとは、Faculty Developmentの略で、教員団の職能開発を意味するとされており、その範囲は(1)講義・演習・実習など授業を計画し教育目標に沿って運営する力、(2)学士課程教育にふさわしいカリキュラムを作り運営する力、(3)一人一人の学生の願いや能力に応じて学修や学生生活、キャリア形成について適切にアドバイスする力、(4)社会のなかで起こっている問題・課題と自らの研究を切り結んで、市民社会の問題解決や文化の向上に貢献する力、(5)教育・研究に責任をもつ大学運営に参画する力などを含むとされています。
つまり、大学の教育・社会活動・運営など、広範囲にわたる大学教員の能力を高めるための方策・活動がFDといわれるものです。大学教員が主体的にこうした力を高める取り組みを組織的に支え、大学全体としても教育の力を高めることがFDの目的です。
本学では、大学教育とはなにかという本質的な議論とともに、授業デザインの方法、シラバスの作成、評価方法、教材開発、ICTを活用した授業など、具体的な授業方法に関する研修を行い、FD活動を活性化しています。
新型コロナウイルス禍における授業の取り組み
2020年度に入り、COVID-19の感染拡大とともに、本学もいわゆるオンライン授業を本格的かつ全面的に実施することになりました。オンライン授業にはリアルタイムで授業を配信する「同時双方向型授業」、録画した授業や資料を配信する「オンデマンド型授業」、対面授業と同時に授業を配信する「ハイフレックス型授業」の大きく三つがあります。学生も教員も戸惑いながらスタートとなりました。多くの教員が助け合いながらよりよいオンライン授業の方法をさぐり、また、学生からは様々な声が寄せられました。オンライン授業には、「教員とのコミュニケーションの難しさ」、「多すぎる課題」などさまざまな問題点と共に、対面授業では出てこなかった教育効果も明らかになってきました。
COVID-19の感染が今後どのようになっていくか、予断を許しませんが、もし感染が収束局面に入ったとしても、オンライン授業が大学から無くなることはなく、むしろ授業方法のひとつとして定着していくと考えます。
私たちは、対面授業とオンライン授業を二者択一のものとはとらえていません。オンライン授業を含めICTを活用した教育方法を充実させたいと考えています。例えば対面授業の予習・復習の学習に先生のオンデマンド講座を使用する、オンライン授業のあとで教員と学生がコミュニケーションできる場をつくる、対面授業のなかで海外を含め遠隔から参加する学生と教室の学生で討議をする、教室にいる学生へ向けて、フィールドワークの現場から教員が配信する、大学に来ることができないゲストを交えて授業を行うなど、さまざまな教育方法の開発が考えられます。対面授業を基本にしながら、学生にとって豊かな学びとなる方法を開発し、本学の教育を充実させたいと考えています。
問われる「大学教育の質」
「大学教育の質」の維持・向上のためには、研究的な対話・コミュニケーションによって思考力を高めること、専門書や資料を読み込む読解力を養うこと、思考を巡らせる時間を大切にすることも重要です。教育の質の維持には、教員側の努力だけではなく、学習に対する学生自身の自覚と主体性も求められます。私たちは学生をお客さんと考えているわけではありません。高い潜在能力をもち、自己形成過程にある学習者と捉えています。「大学教育の質」については、さまざまな議論がありますが、こうした観点にたって「大学教育の質」を高めたいと考えます。
また学生は、クラブ・サークル活動、地域貢献活動など学生らしいスタイルで社会的活動を担う側面も持っています。大学における学生の活動を多面的にとらえ、学生が伸びる教育環境を整えることも、大学の役割です。
そのためには、学生の学習力、到達点、成果、成長実感など学生の状況を把握する必要があります。これについては、1年生から3年生までの基礎学力テスト、卒業時アンケートを実施していますが、結果の分析を通じて本学における教育や学生活動がどのように成長や能力の伸長に関わっているかを把握し、本学の教育のありかたを評価・改善することが重要です。学生の発達の過程は多面的で一人ひとりによって異なりますが、共通の要因や過程もあります。「教育成果の可視化」が強調されていますが、決して一面的、画一的な分析に陥ることがないように注意しながら、佛教大学の教育の成果を把握し、今後の教育改善活動につなげる取り組み―その強化が今後の我々の課題の一つです。
教員の授業運営と重層的なFD
大学教員が学生時代に受けてきたような授業のやり方は、現在の学生には十分には通用しないことも事実です。授業および予習・復習を含めて1単位当たり45時間の学習時間の確保が求められています。これを実現するためには、わかりやすい魅力的な授業を行い、学生が予習・復習をして授業内容を深められるような仕掛けを工夫しなければなりません。その一つが先に述べた、ICTの活用にもつながります。
ただし、学生の現状を把握せず過度の負荷をかければ、かえって学生は学習意欲を失います。また、各教員が担当する科目が、全体のカリキュラムの中でどの位置を占めているのかを考えなければ、これも過重な負担を学生に強いたり、別の科目で学んだことの繰り返しになったりします。
重要なことは、授業のなかでも学生の現状を十分に把握し、教員が担当科目のカリキュラム上の位置や、学部学科の教育目標との関連を重視すること、つまり教員の授業を計画・運営、見直し、評価する力です。
教員個々のミクロレベルのみならず、学部・学科等のミドルレベル、大学全体のマクロレベルでの組織的改善の取り組みを強化する、重層的なFDが本学の目指すところです。
FDの目的
そのような大学教育に求められるものを実現するため、佛教大学では様々なFDにとり組み、その活動を通して、以下に掲げる人材育成を行い、求めるべき能力の達成を目指します。
<人材育成の目標・方針>
- 本学の建学の理念である仏教精神を理解し、人を大切にできる者
- 大学における教育(通信教育を含む)を担当するに相応しい教育上の能力があり、その向上に努めることができる者
- 専攻分野における研究上の能力または高度な実務の能力があり、その向上に努めることができる者
- 研究倫理を遵守し、研究成果を広く社会に還元する意欲に溢れ、それを実行できる者
- 大学および各学部等の教育研究上の目的ならびに3つのポリシー(ディプロマポリシー、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシー)に基づき、学生のために真摯に取り組みを実践できる者
- 大学運営に主体的かつ協力的な行動ができ、職員と協働できる者
<教員に求める能力>
- 教育目標、学生の到達目標が明らかで成績評価が厳正であるといった、大学の授業の基本を守っていけるシステムを維持すること
- 教員による授業の点検・評価・改善の取り組みを支援すること
- 自覚的に学び続ける学生の意欲を引き出すこと