教育推進機構長あいさつ

佛教大学のFDの方向性

教育推進機構長 斉藤 利彦

佛教大学のFD

 FDとは、Faculty Developmentの略で、教員団の職能開発を意味するとされています。その範囲はつぎの5つの力といえます。

  1. 講義・演習・実習など授業を計画し教育目標に沿って運営する力
  2. 学士課程教育にふさわしいカリキュラムを作り運営する力
  3. 一人一人の学生の願いや能力に応じて学修や学生生活、キャリア形成について適切にアドバイスする力
  4. 社会のなかで起こっている問題・課題と自らの研究を切り結んで、市民社会の問題解決や文化の向上に貢献する力
  5. 教育・研究に責任をもつ大学運営に参画する力

 この5つの力を勘案すれば、FD(活動)は大学の教育・社会活動・運営など、広範囲にわたる大学教員の能力を高めるためのものといえます。すなわち、大学教員が主体的にこうした力を高める取り組みを組織的に支え、大学全体として教育の力を高めることがFD(活動)の目的なのです。

 本学では、大学教育とはなにかという本質的な議論とともに、授業デザインの方法、シラバスの作成、評価方法、教材開発、ICTを活用した授業など、具体的な授業方法に関する研修を行い、FD活動を活性化しています。

新たな時代のFDを目指して

 2020年度に入り、新型コロナウイルス感染症の感染拡大とともに、本学もいわゆる遠隔授業を本格的かつ全面的に実施することになりました。遠隔授業にはリアルタイムで授業を配信する「同時双方向型授業」、録画した授業や資料を配信する「オンデマンド型授業」、対面授業と同時に授業を配信する「ハイフレックス型授業」の大きく3種類があります。

 2020年4月以降、全国的にも、また本学でも、授業方法や形態をめぐっては混乱し、大学の危機対策本部会議や遠隔授業推進委員会、学部教授会など、あるいは教員間で多くの時間を費やし議論しました。その際、〈学生の学びを止めない〉を念頭においたのは言うまでもありません。

 コロナ禍のなか、多くの教員が助け合いながら、よりよい遠隔授業の方法をさぐり、また、学生からは様々な声が寄せられました。遠隔授業に対しては、「教員とのコミュニケーションの難しさ」、「多すぎる課題」などのデメリットも指摘されていますが、授業の再現性による理解度の促進や復習の均一化など、対面授業では出てこなかった教育効果も明らかになってきています。

 遠隔授業はダイバーシティに対応する未来志向の答えを持っている、と考えます。そのため、遠隔授業を、コロナ禍のなかの体験授業の代替措置・方法とせず、学生の個別最適化の学修を実現させていく〈新たな授業形態〉として定着させていく必要があるでしょう。

 2021年度より、本学はBYOD必携化を掲げました。遠隔授業を含むICTを活用した教育方法による従来にはない教育を展開させていくことが望まれています。たとえば、対面授業の予習・復習に、先生のオンデマンド講座を使用する、遠隔授業終了後、教員と学生がコミュニケーションできる場をつくる、対面授業のなかで、海外を含め遠隔から参加する学生と教室にいる学生で討議をする、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士と遠隔授業で対話する、教室にいる学生へ向けて、フィールドワークの現場から教員が配信する、大学に来ることができないゲストを交えて授業を行うなど、さまざまな教育方法の開発が考えられます。

 このように、本学は対面授業を基本にしながらも、ICTを活用した、学生にとって豊かな学びとなる方法を開発し、本学の教育を充実させたいと考えています。

FD(活動)を企図する際に

 日本の大学は1960年代には選抜機能が課題とされ改革がなされてきましたが、1990年代からは18歳人口の減少も相俟って、教育内容や機能が問われるようになりました。2000年代にはいると、とくに人材養成機能が社会的に要請されています。具体的には、学習者本位の教育やSTEAM人材教育、イノベーション創出、生涯学習などがそれらであり、こういった社会的要請に応えるために、大学は教育内容として、アクティブラーニングの積極的導入や初年次教育改革、IR部門の設置、最近では、初等中等教育におけるGIGAスクール構想を背景としたICTを活用した新たな教育方法、文理融合型教育の導入などを行っています。

 2020年2月以降、わが国において本格化した新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、大学における教育内容や方法はさることながら、大学という存在そのものを、社会から、保護者から、そして学生、高校生から問われることとなりました。全国規模の学生向け調査(アンケート)、あるいは本学が実施した各種学生向けアンケートなどにあらわれた大学教育に対する不満や不信を、我々、大学人は真摯に受け止めなければなりません。

 高等教育機関である大学は、いま新たな「大学像」への再構築が迫られています。すなわち、大学は今回のコロナ禍を教訓とし、再び危機的状況が生じても、学生の学びを止めず、活動などを停滞させない強靭な組織や体制、意識の変革を求められているのです。これらは容易なことではないかもしれず、また多くの困難があるものといえます。ただし目を転じれば、大学と大学教育の発展の契機と捉えるべきであり、「大学」は新たな可能性と成長の機会を与えられた、と考えるべきでしょう。

 これからのFD(活動)は単なる教員団の職能開発にとどまるのではなく、教員が新たな時代を生き、新たな時代を担う学生に指針をしめすことのできる内容も求められているといえ、企画を考える際、そういった内容も志向していきたいと考えています。

教員の授業運営と重層的なFD

 従来の大学像や教員象、学生像ではなく、新たな時代の教育を模索していかなくてはなりません。これまでの成功体験などにとらわれることなく、柔軟な思考によって、つねに教育手法、方法をアップデートしていかなくては、大学教育の質を担保していくことはできません。そのためのFD(活動)であり、意識、教育手法・方法を向上させ、全学的に充実した教育を展開するように努めていきたいと考えています。

 大学においては、授業および予習・復習を含めて1単位当たり45時間の学習時間の確保が求められています。これを実現するためには、わかりやすい魅力的な授業を行い、学生が予習・復習をして授業内容を深められるような仕掛けを工夫しなければなりません。その一つが先に述べた、ICTの活用にもつながります。

 ただし、学生の現状を把握せず過度の負荷をかければ、かえって学生は学習意欲を失います。また、各教員が担当する科目が、全体のカリキュラムの中でどの位置を占めているのかを考えなければ、これも過重な負担を学生に強いたり、別の科目で学んだことの繰り返しになったりします。

 重要なことは、授業のなかでも学生の現状を十分に把握し、教員が担当科目のカリキュラム上の位置や、学部学科の教育目標との関連を重視すること、つまり教員の授業を計画・運営、見直し、評価する力です。

 教員個々のミクロレベルのみならず、学部・学科等のミドルレベル、大学全体のマクロレベルでの組織的改善の取り組みを強化する、重層的なFDが本学の目指すところです。

FD(活動)の目的

 そのような大学教育に求められるものを実現するため、佛教大学では様々なFD(活動)にとり組み、その活動を通して、以下に掲げる人材育成を行い、求めるべき能力の達成を目指します。

<人材育成の目標・方針>

  1. 本学の建学の理念である仏教精神を理解し、人を大切にできる者
  2. 大学における教育(通信教育を含む)を担当するに相応しい教育上の能力があり、その向上に努めることができる者
  3. 専攻分野における研究上の能力または高度な実務の能力があり、その向上に努めることができる者
  4. 研究倫理を遵守し、研究成果を広く社会に還元する意欲に溢れ、それを実行できる者
  5. 大学および各学部等の教育研究上の目的ならびに3つのポリシー(ディプロマポリシー、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシー)に基づき、学生のために真摯に取り組みを実践できる者
  6. 大学運営に主体的かつ協力的な行動ができ、職員と協働できる者

<教員に求める能力>

  1. 教育目標、学生の到達目標が明らかで成績評価が厳正であるといった、大学の授業の基本を守っていけるシステムを維持すること
  2. 教員による授業の点検・評価・改善の取り組みを支援すること
  3. 自覚的に学び続ける学生の意欲を引き出すこと
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