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虚血性心疾予防のためのリラクセーション法(PMR)の導入

名前 岡田 朱民(保健医療技術学部 看護学科)
科研費種別 基盤研究C
研究課題 虚血性心疾患予防のための生活習慣指導への漸進的筋弛緩法の導入
研究期間 2016 〜 2019

研究目的

我が国の虚血性心疾患の死亡率は、国際的にみると比較的低いレベルにあるものの*1、平成24年度の循環器疾患による国民医療費のうち、心筋梗塞が含まれる虚血性心疾患の医療費は、7421億円となり*2、循環器疾患の医療費がいかに大きいかがわかる。循環器疾患は慢性の疾患であり、かつ、死亡率が癌のように高くない代わりに、継続した医療が必要なことによると考えられる。そのため、生活習慣の是正あるいは、環境整備により、国全体として循環器疾患を予防する体制づくり、社会づくりが急務であるといえる。

本研究では、虚血性心疾患発症の危険率が高いとされるタイプA行動パターンを持つ成人期の対象者に、日常生活のセルフケアとして漸進的筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation以下PMR)を指導し、虚血性心疾患の予防のためのストレス認知と行動変容の可能性について検証した。

【引用文献】
*1 福原正代,清原裕:虚血性心疾患の日本人における動向・予後,medicina,Vol.51,No.4,p586-589,2014.
*2 厚生労働省:平成24年度国民医療費の概況,http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/12/dl/kekka.pdf.2015.6.16.

研究内容

【研究デザイン】シングルケースデザイン法と質的研究法の混合研究法

【対象者】冠動脈危険因子を持つ成人期の男女5名

【研究方法と分析方法】一人の研究期間を週に1回、7か月とし、介入前のベースライン期を2か月、操作導入期を3か月、その後の自宅での自己訓練期を2か月と設定して実施した。

毎回のリラクセーション反応の評価は、介入前後の①脈拍、②血圧、③HRV(生体センサーMemCalc/BonalyLight使用)④リラックス度、⑤心理的ストレス反応測定尺度(Stress Response Scale-18:SRS-18)とし、視覚的判断及びランダマイゼーション検定を実施した。また、ストレス認知と行動変容の経過については、体験記録への自由記述及び面接時の会話内容の回顧的記述を用い、ラザルスの心理学的ストレスモデルに照らして分析した。最終的なアウトカム指標としては、A型行動パターンスクリーニングテスト及び半構成的面接のデータを用いた。

本研究は、本学の倫理審査委員会の承認を受けて実施した。

研究結果

PMR実施後、収縮期血圧は操作導入期に低下し、脈拍は大きな変化はなく横ばいであった。LF/HF、リラックス度は操作導入期より上昇し、SRS-18は低下した(Figure1~6)。

Figure1〜6 介入前後の生理的・心理的指標の結果

また、ランダマイゼーション検定の結果、収縮期血圧及びSRS-18の実施前後変化量は、ベースライン期より、操作導入期、操作導入期+自己訓練期で有意に低下し、またリラックス度の実施前後変化量は、有意に上昇した(Table1)。これらの結果からPMRによってリラクセーション反応が認められたといえる。

Table1 Marascuilo & Busk法によるランダマイゼーション検定の結果

個別のストレス認知と行動変容の変化は、Figure7に示す。ベースライン期における記録の自由記述及び面接時の発言から、全員がラザルスの認知的評価でいう「ストレスフル」の状態であることが分かった。しかし、自らのとらわれや否定的な思考パターンに気づくプロセスを阻害することがないよう、PMRの介入を繰り返し行い、面接にて生活で気になること、PMR後の気づきについて確認した。その結果、操作導入期では、自分の身体に起こるリラックスした状態が気持ちの安寧をもたらすことや血圧値の低下、中性脂肪の低下などの身体変化につながることを実感するようになった。そして、自身のおかれている状況や考え方の偏り、認知のゆがみに少しずつ気づくことができた。さらに、自己訓練期にはリラクセーション法を拠り所にして生きていけると述べる者もあり、個々の差はあるもののリラクセーション法を日常生活に取り入れることができたといえる。そして、介入実施後のA型行動パターンの得点は低下し、B型へ傾いた(Table2)。これらのことから、PMRの指導により自分の内面に目を向けるきっかけになり、ストレスをコントロールする行動へと変化した。

Figure7 ラザルスの心理学ストレスモデルに沿った分析

Table2 研究実施前後のA型行動パターンの変化

本研究により、リラクセーション反応を確かめながら、自分自身の認知の傾向やとらわれに気づき、セルフコントロールの必要性を認識することができ、心疾患予防につながる行動変容の可能性を明らかにすることが示唆された。

研究者紹介

岡田 朱民(保健医療技術学部 看護学科)

専門分野

基礎看護学(基礎看護技術、補完代替医療/療法、リラクセーション)

科学研究費採択

  • 平成26年度 科学研究費補助金基盤研究(A):研究分担者:リラクセーション指導者育成教育プログラムの構築と評価、2012 ~ 2015
  • 平成26年度 科学研究費補助金基盤研究(C):研究分担者:看護における補完代替医療/療法の概念化に関する研究、2014 ~ 2019

最近の業績

  • 「リラクセーション法の活用におけるリラクセーションの概念分析」保健医療技術学部論集(2020年)
  • 「リラクセーションを基礎教育にどのように位置づけるか 学ぶ・活用する(支援する)」看護教育/医学書院(2019年)
  • 『医学・看護・福祉原論 いのちに基づいた医療&健康』ビイング・ネット・プレス(2019年)
  • 「看護管理者に知ってほしいリラクセーション法とその効用」看護管理/医学書院(2018年)
  • 『看護学概論 看護追及へのアプローチ 第4版』医歯薬出版株式会社(2018年)

その他業績

看護学概論 看護追及へのアプローチ
(医歯薬出版)

出版物

看護学概論 看護追及へのアプローチ
(医歯薬出版)
2018年

医学・看護・福祉言論
(ビイング・ネット・プレス)

出版物

医学・看護・福祉言論
(ビイング・ネット・プレス)
2019年

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