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「マグマが地下深くでゆっくり冷えて固まる」とはどのくらいの期間なのか?

名前 平田 豊誠(教育学部 教育学科)
科研費種別 基盤研究C
研究課題 地質学的時間概念と空間概念の認識実態調査及び概念獲得方策の提案
研究期間 2018 〜 2020

研究目的

研究背景

理科の教科書で、火成岩の成因、火山岩と深成岩のでき方の違いとしての説明は一般的に次のように記されている。

ここでは、「長い時間をかけてゆっくり冷える」についての具体的期間や、「地下深く」という具体的数値が明記されていない。また教授者や学習者が実際に深成岩のできる冷却固結に要する時間(地質学的な時間スケール)や、深成岩のできる深さ(マグマだまりの深さに相当)について具体的に正しく認識しているかどうかは不明である。これら地質学的な時間スケールや空間スケールについての認識状況を明らかにする必要がある。

研究目的

教授者および学習者の持つ地質学的時間概念・空間概念それぞれについて認識状況を明らかにし、概念獲得のための改善方法を提案すること。

研究内容

  1. 教科書等での「マグマが地下深くでゆっくり冷えて固まる」という抽象的記述に対して、深成岩ができる冷却固結に要する具体的時間や深成岩のできる所の具体的深さについて、小学校教員、中学校理科教員、教員志望学生を対象に認識調査を行った。
  2. 文部科学省検定済みの理科教科書(中学校5社、高等学校:地学基礎5社、地学2社)および教師用指導書の記述内容を分析し、深成岩の冷却固結に要する時間やマグマだまりの深さの具体的記載の内容を分析した。
  3. これらをもとに、深成岩における正しい地質学的時間概念・空間概念を獲得するための具体的提案や方策を検討した。

研究成果

(1)深成岩の冷却固結に要する時間の認識状況

義務教育段階で捉えておくとよい花崗岩質マグマの冷却固結に要する時間の妥当な範囲は、10万年位から1000万年程度であることを示した。

妥当な回答を行った小学校教員は7.3%、中学校理科教員は11.6%だった(表1)。教員志望学生対象では2.7%,初等教育志望者で4.4%、中等理科志望者で3.0%だった(表2)。

(2)深成岩のできる所(マグマだまりの深さ)の認識状況

深成岩のできる深さについて妥当な回答を行ったのは小学校教員では全体41人中10人(24.4%)、中学校理科教員では155人中66人(42.6%)であった。小学校教員全体と中学校理科教員全体における差(18.2ポイント)について有意差が認められた。

(3)深成岩の冷却固結に要する時間の認識状況の考察

  • 小学校教員の中では、地質学的時間スケールといっても、ヒトの時間スケール(おおよそヒトの寿命に対する時間概念)にとどまっていると推察できる。
  • 中学校理科教員では、ヒトの時間スケールよりも長い時間スケールで捉えていることが推察できる。しかし数千年から数万年と明らかに短い時間として認識していることが明らかとなった。
  • 抽象的な表記で示されている内容について、教授者によって妥当な認識ではなく、自身の主観的な解釈によって教授がなされている可能性を指摘することができる。

→解決案として、義務教育段階の中学校理科教科書等において、深成岩の冷却固結に要する時間の具体的な期間の記載を行っておくことが考えられる。

(4)研究成果の社会的還元

1点目:A社の教科書教師用指導書に、下の枠内のような内容の記述を行い、中学校で理科を教える教員の理解を促すことに貢献できた。

2点目:街中における石材(主に花崗岩や大理石)に着目し、これら街中化石・石材を題材にフィールドワークを主体とした授業を立案・実施し、学生の地質学的時間スケールの獲得と化石を見出す能力の伸長に貢献できた(図1、2)。

図1 街中化石・石材フィールドワークの風景

a:化石を探している学生。床には赤茶色系とやや淡いオレンジ色の石を見ることができる。b1,b2:床にあるアンモナイト。b2はb1の四角部分を拡大したもの。

図2 大学構内の石材
ほとんどが深成岩であり、できた年代と冷えて固まった期間の学習が可能

a:柱の部分が深成岩、b:ほとんどが深成岩(数十万年から数百万年かけて冷えて固まった)、茶色く見えるものはバルチックブラウンと言われる石材でラパキビ花崗岩(フィンランド産、約16億年前にできた)

研究者紹介

平田 豊誠(教育学部 教育学科)

専門分野

理科教育学、地学教育学、教科教育学

科学研究費採択

  • 基盤研究C 理科授業に作問指導を導入した時の学習評価のための実用的ルーブリックの開発・検証 2015-2017
  • 奨励研究 場面解決型問題データベースの構築とテキスト分析を通した効果的な問題抽出 2013
  • 奨励研究 日常用語と科学用語の混同による概念獲得の阻害要因の究明と実践的解決策の開発 2007
  • 奨励研究 学習到達度を測る観点別評価基準収録集の作成と有効性の検証(中学理科地学) 2005

最近の業績

  • 『新しい科学1,2,3』(中学校理科検定教科書)、東京書籍、2021年3月
  • 『新しい科学教師用指導書1』、東京書籍、2021年3月
  • 「街中化石・石材探検フィールドワーク―教員志望学生の興味を引き出し教員としての素養とする―」、みんなの地学、2号、pp.49-60、2021年6月
  • 「科学的に適切な電流概念を獲得することにつながる電気回路モデル教材の開発」、教育実践学研究、22号、pp.25-33、2021年3月
  • 「深成岩の「ゆっくり冷えて固まる」とはどれくらいの時間なのか?-小学校教員と中学校理科教員の認識実態とその比較検討-」、理科教育学研究、61巻2号、pp.383-389、2020年11月

受賞業績

  • 平田豊誠准教授ゼミ わくわく研究室「はぐくみアクション賞」(京都はぐくみ憲章)受賞 2020年2月

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