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ひきこもりの実態と支援課題 ―当事者の生活史を遡って―

名前 山本 耕平(社会福祉学部 社会福祉学科)
研究課題 2019年度 ひきこもり支援実態調査
【委託事業先:滋賀県ひきこもり支援センター(滋賀県精神保健福祉センター)】
研究期間 2020年5月15日~2020年7月15日

調査の目的

  • 県内の相談機関・団体等におけるひきこもり支援の現状と課題を把握する
  • 相談機関団体等につながっている方の相談状況や支援ニーズを明らかにする

調査の方法

県内のひきこもりに関わる相談支援を行う関係機関団体を対象とする郵送法

調査票A(組織用)

調査期間:2020(令和2)年5月15日~6月15日

配布数:292

有効回答数:128

調査目的:2019年度(平成31年4月1日から令和2年3月31日の1年間)の期間にひきこもり支援を実施した関係機関・団体のひきこもり支援の状況(相談支援の対応、相談件数等)を明らかにする。

調査票B(個別事例用)

調査期間:2020(令和2)年5月15日~7月15日

有効回答数:1,043(66機関)

調査目的:支援開始からこれまでに面接相談を実施した事例で、かつ2019年度(平成31年4月1日から令和2年3月31日の1年間)の期間で、関係機関・団体がひきこもりに関する相談支援を行った個別事例の支援状況(ひきこもり期間や支援経過等)を明らかにする。

調査結果

ひきこもり支援組織運営形態 [図1]

  • 市町の組織が58%と最も多い
  • 市町のなかでも保健部課、青少年部課、発達支援部課が多い
  • ⇒市町が専門職を配置し、ひきこもり支援に取り組むことが今後の大きな課題になっている

事業領域別相談件数 [図2]

  • 2019年度の県下の延べ相談件数は、本人を対象としたものは9591件、家族を対象としたものは8421件、支援者を対象としたものは3526件となっている。図は、これを事業領域別に示したものである。
  • 本人を対象とした事例数のうち、各領域の占める割合をみると、最も多いのが医療であった。医療は延べ2287件であり、全体の24%を占める。これは、発達障害等の基礎的な障害、あるいは長期のひきこもりゆえに高まる医療ニーズを示している。

2019年度新規相談者の男女別・年代別の数 [図3]

  • 最も多いのは、20代 男性 214名(24%)、10代 女性 124名(31%)
  • 40代以上 男性 234名(27%)、女性 72名(18%)

延べひきこもり期間 [図4]

  • ひきこもり経験のない者が対象となっていることや、ひきこもり期間が1年未満の者が一定いることから、早期の相談、支援が可能になっていると考えることができる。
  • 5~10年が16%、10年以上が28%とひきこもり期間の長期化がみられる。

精神疾患との関連 [図5]

19歳未満:103名(42.2%)、20~39歳:278名(49.4%)、40歳以上:96名(45.7%)に精神疾患がある。

  • 今までに精神疾患をもったことがある者...ASDが167件(23%)と最も多い。ひきこもりが原因で自閉傾向を持つとは考え難く、元々持っていた自閉症障害による社会生活の困難さからひきこもったと考えられる。次に多いのが感情障害144件19%(うつ病126件17%、双極性障害18件2%)
  • 発達特性の指摘...幼児期になんらかの指摘を受けた者が全体の38%(乳幼児健診、発達相談の利用、幼稚園・保育園等)
  • 幼児期さらには学童期という人生の早い時期の発達経過をどう支援するのか...発達特性が指摘された者が、指摘を受けてからどのように支援を受け、ひきこもりに至っているのかを生活史を遡って分析することが重要

研究のまとめと結果

  • 内閣府調査の基準に基づき、滋賀県下のひきこもり推定数を求めたところ、15歳以上65歳未満の狭義のひきこもりが5942人、広義のひきこもりが12,595人にのぼる。広義のひきこもり人数は、15歳以上65歳未満人口837,670人の1.5%にあたる。
  • 全県下で支援を受けている本人の年代は、10代が28%、20代が26%、30代が21%、40代以上が27%となっている。若者を中心とするひきこもりの支援が中心となっていると言えるが、40代、50代のひきこもり当事者も支援現場に登場している。
  • ひきこもる人のなかで発達特性があると診断されている人の38%が乳幼児期にその指摘を受けている。今後、その人たちが、ひきこもるまでの期間をどう支援されてきたかを詳細に検討する必要がある。また、延べひきこもり期間が5年~10年未満が17%、10年以上が28%となっている。一度ひきこもりから脱したように思われても、再度ひきこもる人も多くいるため、延べひきこもり期間が長くなっているのではないかと考えられる。このことから、継続したひきこもり支援の必要性が問われている。

研究者紹介

山本 耕平(社会福祉学部 社会福祉学科)

専門分野

精神保健福祉

科学研究費採択

  • 基盤研究C「ひきこもる若者が実践主体となる支援の哲学・方法・制度の研究」2013-2016
  • 基盤研究B(分担者)「障害者施設職員のメンタルヘルス予防対策の検討-福祉現場の職階に視点をあてて」2011-2014
  • 基盤研究C「ひきこもる若者の社会的支援策の研究-ケースコントロール・スタディを用いて-」2009-2011

その他の競争的資金

  • 三菱財団助成「ひきこもる若者を対象とするピアアウトリーチ支援者養成に関する研究」2011-2013

最近の業績

  • 社会・経済的構造の「問題」としての「ひきこもり」と「支援」の課題、「公益財団法人鉄道弘済会」、140号、PP.32-41、2021年4月
  • オルタナティブな自立を目指した若者福祉政策の課題ー就労自立から総合的自立へー、「総合社会福祉研究所」49号、PP.21-29、2020年5月
  • 日本の福祉制度における若者福祉の位相 ―地域若者実践の哲学・課題を中心に―、2018年第4回自活福祉国際シンポジウム報告集、pp.45-98、2018年11月
  • 今日もいっしょに空を見上げて 相談員 吉田春花〜、きょうされん(萌文社)、2017年9月

その他業績

朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20210402002689.html

新聞記事

朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20210402002689.html
2021年4月3日

ひきこもりソーシャルワークー生きる場と関係の創出ー
(かもがわ出版)

出版物

ひきこもりソーシャルワークー生きる場と関係の創出ー
(かもがわ出版)
2021年3月

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