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実践の可視化からつながる包括的脳卒中看護への期待

名前 山本 直美(保健医療技術学部 看護学科)
科研費種別 基盤研究C
研究課題 予防・治療・在宅療養を視野に入れた脳卒中包括的看護実践モデル構築に関する研究
研究期間 2015 〜 2020

研究の背景と目的

近年、脳卒中による死亡は減少傾向にある。しかし、その一方で、脳卒中入院患者数は上昇しており、救命を果たしても社会生活への復帰を望めない脳卒中患者は増加し、自宅復帰率の向上が課題でもある。つまり、急性期医療と同時に、自宅復帰を見据えた長期的視点を含んだ看護活動が期待される。その活動の中核的にいるのが「脳卒中リハビリテーション看護認定看護師:Stroke Rehabilitation Nursing」(以下、脳卒中リハ認定看護師)である。

本研究は、予防医療の観点から脳卒中予備軍や無症候性脳血管障害患者の健康維持と脳卒中治療における脳卒中患者の生涯にわたる健康生活支援の観点から脳卒中リハ認定看護師を中心とした看護活動の実態を明らかにし、今後の包括的看護実践活動のあり方を探求するものである。

研究内容

1、研究デザイン:因子探索的研究デザイン(実態調査)、方法論的研究デザイン

2、研究方法

  1. 脳卒中リハ認定看護師の看護活動の実態調査:"脳卒中リハ認定看護師" "脳神経診療科の一般看護師" "脳卒中診療医師" "リハビリテーションセラピスト"への半構造化面接法によるデータ収集。質的記述的分析/テキストマイニング分析。
  2. 脳卒中看護実践活動評価:評価尺度開発による活動の可視化:被験者は脳卒中リハ認定看護師285名。評価尺度開発ステップは、①尺度原案の作成。②表面妥当性、内容妥当性、基準関連妥当性の検討。③因子分析による構成概念妥当性及び、信頼性の検討。

研究成果

1、脳卒中リハ認定看護師の看護活動の実態

脳卒中リハ認定看護師の活動は、【看護の質保障に向けた省察と主導的実践看護】【専門的な臨床判断に基づいたベッドサイドケア】【多職種連携協働の円滑化を図る組織横断的看護実践活動】【脳卒中患者への継続看護活動の推進】【病院内外の学習ニーズに応える教育的活動】【脳卒中患者の生活全体を尊重する看護観の表出】【看護管理者と認定看護師役割の付与に伴う活動のマネジメント】【認定看護師としての役割意識に基づいた研究・学習】ということが明らかになった(表1)。この研究で抽出された看護活動は、療養生活全過程を見据えた生活行動機能活性への多面的な活動をしている。この活動の範囲は他の認定看護師と比較しても特異的であると考えられた。

表1.脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の活動

2、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の活動への多職種及び脳神経診療科看護師の認識

一般の看護師は脳卒中リハ認定看護師の活動を曖昧に認識している一方で、脳卒中リハ認定看護師の活動を、専門的な知識を基に、退院指導、患者観察、リハビリテーションでの看護実践、看護師への教育、他職種との連携など多岐にわたるという認識を持っていた。

医師とリハビリテーションスタッフ(以下、RS)は、認定看護師の活動を概ね肯定的に認識していた。RSは認定看護師にリハビリテーションの視点があることで、「すごい」「リハビリ」「SCU」「うまい」という表現で円滑な連携が促進されていると認識していた(図1)。医師は、「わかる・ない」「しれる・ない」という表現で、脳卒中リハ認定看護師に熟練した高い水準の脳卒中医療実践者の役割を期待する一方で、活動内容の不透明さを認識していた(図2)。また、職種間の実践内容の重複、違和感などがあり、他職種間との相互理解を深める必要性が示唆された。そのため、脳卒中リハ認定看護師の活動・成果を可視化できる評価指標の考案が望まれた。

図1 リハビリテーションスタッフの特徴語分析の結果

図2 医師の特徴語分析の結果

3、脳卒中看護実践活動評価:評価尺度開発による活動の可視化

脳卒中リハビリテーション看護認定看護師実践活動評価尺度の開発を試みた。

結果、5因子45項目(累積寄与率48.7%)に整理された.各因子負荷量は.45 - .87と安定した値を示した。第1因子【患者の今後の生活を視野に入れた実践活動】は14項目(寄与率35%)、第2因子【認定看護師としての役割意識に基づいた教育・指導・研究活動】は13項目(寄与率6.5%)、第3因子【スタッフを巻き込んだベッドサイドケア】は6項目(寄与率5.3%)、第4因子【多職種と連携した協働的活動】は6項目(寄与率4%)、第5因子【独自の組織横断的実践活動】は6項目(寄与率3.3%)で構成された。信頼性は、尺度全体でCronbach's α .951、下位尺度は .917 - .784と高い信頼性を示した。開発された尺度は脳卒中リハ認定看護師の現実的な実践活動を可視化でき、評価指標として有用であると考えられた。

4、脳卒中看護の包括的看護実践の可能性

本研究活動を通して、脳卒中リハ認定看護師の活動は、非常に長期的であり、病院内にとどまらず、地域での予防や生活支援まで及んでいたことが明らかになった。病院内看護から地域在宅での活動といった脳卒中患者への包括的看護実践の可能性は、脳卒中リハ認定看護師を中心として、他の認定看護師、看護師〔入院・外来〕・在宅看護師などで編成される活動モデルによってなされる必要がある。

研究者紹介

山本 直美(保健医療技術学部 看護学科)

専門分野

基礎看護学

科学研究費採択

  • 基盤研究C 脳卒中予防医療におけるドック診療と外来診療の看護活動連携プログラムの構築 2010-2013
  • 基盤研究C 脳卒中予防医療における無症候性脳血管障害患者の看護ケアシステムの開発に関する研究 2006-2009

最近の業績

  • 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の看護活動の実際:日本看護研究学会雑誌、2020
  • 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の活動への他職種の認識 医師とリハビリテーションスタッフに焦点を当てて:日本脳神経看護研究学会会誌、2020
  • 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師のキャリア形成の様相:日本看護研究学会雑誌、2020
  • 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師実践活動評価尺度の開発 信頼性・妥当性の検証:日本脳神経看護研究学会会誌、2018
  • 『看護学概論 第4版 看護追及へのアプローチ』、医歯薬出版株式会社、2018年2月
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