研究活動紹介
男性家族介護者の負担感軽減と虐待防止支援について考える
名前 | 植村 小夜子(保健医療技術学部 看護学科) |
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科研費種別 | 基盤研究C |
研究課題 | 男性家族介護者の介護負担軽減と虐待防止支援プログラム開発 |
研究期間 | 2016 〜 2019 |
Ⅰ 背景
わが国は、超高齢社会に突入し、疾病を抱え介護を必要とする高齢者が増大している。さらに、世帯の縮小化が進行する中、男性が介護を担う割合が年々増加している。

虐待の比率では夫と息子によるものが61.3%(10802/17614人)と高い(平成27年度高齢者虐待対応状況調査、2017)。また、虐待発生要因の上位2位は介護疲れ、介護ストレス(25%)、虐待者の障害・疾病(23.1%)である(老健局高齢者支援課調査結果:2015)。
自ら支援を求めてこない男性の特性を踏まえた支援が危急の課題である。
男性家族介護者の特徴とニーズを明らかにし、増加傾向にある、男性家族介護者の介護負担の軽減と虐待の防止を図り、心身の健康と生活の質の向上に向けた支援を行うことは課題である。
Ⅱ 研究の目的
本研究の目的は、男性家族介護者に関する質的・量的分析から男性家族介護者の特性・ニーズを明らかにし、彼らの介護負担軽減と虐待防止支援プログラムを開発することである。
Ⅲ 研究内容および研究成果
研究期間内で国際学会4回、国内学会4回、シンポジュウム1回を開催する中で得られた研究成果の概要
明らかになった男性家族介護者の特徴
- 被介護者は、ほとんどが妻か母親である。
- 比較的高齢になってからも介護を担う。
- 認知症の妻の介護をする場合が最も多い。
- 1日の介護に関わる平均時間が10時間と長い。
- 7~8時間の睡眠の確保が重要な要素である。
- 高齢になっても趣味を楽しむ。
- 被介護者の行動に困惑したり腹が立ったりする傾向がある。
- 女性に比べて介護を他人に任せようとは思わず、一人で介護する。
- 介護の大変さを人に知られたくなく孤立する可能性がある。
- 男性が同性の被介護者を介護する時の負担感やストレスが高い。
- 若いほどストレスに対する対処能力は低い傾向がある。
- 男性介護者の約8割が介護者会に行きたがらない。
男性家族介護者の特徴を踏まえた支援策
- 男性が介護することに張り詰め、頑張りすぎないような支援が必要である。
- 介護度の高い被介護者を介護している場合は、特に介護者自身のための時間が確保できるような支援が重要である。
- 適度な睡眠時間や趣味があれば介護負担感を減少させる傾向があり、休息や気晴らしの時間を確保することが大切である。
- 年齢が若く、同性を介護している男性は、 ストレス対処能力が低い傾向があるため、特に支援を充実させる必要がある。
- 男性は、介護を自分以外の人に任せたり、大変さや困ったことを他人に知られたくない傾向が女性に比べ高く、介護を仕事のように熱心に行う傾向があることに配慮した支援が必要である。
- 年齢が若い、特に息子が母親の介護を行うとき、これまでの人生における生活体験、仕事のことも考慮し、本人の負担感、ストレスの軽減方法についての検討をして支援する必要がある。
- 介護を継続できる支援の1つとして介護会が有効に活用されるためには,参加することのメリットを周知する必要がある。
介護負担感軽減と虐待防止支援プログラムの開発にむけて
質的・量的調査と分析で明らかになった男性介護者の特徴・ニーズ、 更にその支援の緊急性や優先度を基に男性家族介護者の介護負担の軽減、被介護者への虐待防止支援プログラムを開発することの意義は大きいと考える。介護負担の軽減、被介護者への虐待防止支援プログラムを開発するよって、地域で支援する人が男性介護者の特徴に配慮した支援が行え、在宅生活を送る在宅療養者および在宅家族介護者のQOLに配慮した在宅介護支援の可能性が広がる。それによって、男性家族介護者の心身の健康保持に寄与でき、在宅療養者および在宅家族介護者のQOLの向上に寄与できる。
男性介護者の支援に必要なアセスメント項目
- 介護者の年齢層
- 睡眠時間
- 介護年数
- 介護者の趣味の有無
- 家庭での家事の体験状況
- 家族会等社会資源利用状況
- 他の介護者の有無
- 被介護者の要介護度
- 被介護者の寝たきり度
- 被介護者の認知機能と重症度
研究者紹介

植村 小夜子(保健医療技術学部 看護学科)
専門分野
在宅看護学、公衆衛生看護学
科学研究費採択
基盤研究C「新任期保健師の活動計画立案と評価能力育成プログラムの開発」2008-2010
最近の業績
- 「Heatstroke prevention with multi-device terminals via sensing of older adults living alone」Journal of Wellness and Health Care(2020年)
- 「Longitudinal study examined to physiological and psychological transition for the development of sensing indicators of daily living among solitude elderly persons」Tsuruma Health Soc.(2017年)
- 「在宅療養者への看護診断適用 診断ラベル選定とアセスメントリスト作成」人間看護学研究(2016年)
- 「看取りまでの介護者の思いと在宅介護で望む支援」人間看護学研究(2016年)
- 「独居高齢者の在宅生活を支援する生活行動センシングモデルの開発センシングによる可能性を検討」別冊地域ケアリング(2015年)
- 「Characteristics of Male family Caregivers in Japan and Their Sense of care Burden, Capacity to Deal with Stress, and Subjective of Well-Being」Health(2014年)