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足関節運動をサポートする歩行支援装具の開発

名前 谷田 惣亮(保健医療技術学部 理学療法学科)
科研費種別 基盤研究C
研究課題 三次元足継手を有する足関節補助装具の開発に関する研究
研究期間 2017 〜2019

研究目的

下肢機能低下は歩行などの移動機能を低下させるが、移動機能が損なわれると、日常生活への支障だけでなく生活範囲を狭小化させ、運動機能の更なる低下や精神機能の低下にもつながる負の連鎖を引き起こすことになり、結果、要介護状態に陥ることになる。

我々は下肢機能障害による歩行能力低下に対する歩行支援システムの開発に関する研究を行ってきた。その中で、足関節を機械的に制御可能な制御型短下肢装具(i-AFO)および制御機構の開発・改良を行った(図1)。これにより正常に近い歩行が実現できたが、対象範囲が限定されることや、システムが大がかりとなり重量や簡便性の点で課題があった。そのため、より対象範囲が広く下肢機能を支援可能な軽量で簡易な装具の開発に至った。本研究では、足関節運動をサポートする簡易な装具(足関節補助装具)を開発することで、下肢機能障害者の歩行を改善することを目的として実施した。

図1 制御型短下肢装具(i-AFO)

研究内容

本研究では、3年間で下記の5つの事項を実施した。

  1. 足関節補助装具および三次元足継手の概要デザインを作製する。
  2. 概要デザインに基づき、足関節補助装具の試作モデルを製作する。
  3. 試作モデルを用いて、健常者による歩行実験を行い、装具を改良する。
  4. 足関節補助装具(改良モデル)を製作する。
  5. 足関節補助装具(改良モデル)を用いて、有疾患者による歩行実験を行い、有効性を検証する。

研究成果

1. 三次元足継手と足関節補助装具(試作モデル)の製作

三次元足継手(人工的足関節)として、弾性体内蔵型柔軟関節(elastomerembedded flexible joint:EEFJ)を開発した。EEFJは、C型板ばねと円形エラストマで構成され、足関節の底背屈を制動するものである。この三次元足継手を組み込んだ足関節補助装具の試作モデルを製作し、健常被験者による歩行実験を行い、歩行データを収集した。

2. 足関節補助装具(改良モデル:靴装着型)の製作

試作モデルの課題を検証し、改良モデルとして靴装着型の足関節補助装具の製作に至った(図2、3)。改良点の1つ目は、身体に直接装着する装具から靴の外側に装着する仕様とした。このことで、患者の靴に直接装着でき、足関節補助力が発揮しやすくなった。2つ目は、装具の主要構成部分を、強度を保ちながら可動性(柔軟性)を有する素材に変更した。このことで装具の主要構成体でも足関節本来の複合運動を保証することが可能となった。

図2 足関節補助装具(靴装着型)の構造

図3 足関節補助装具(靴装着型)の装着図

3. 足関節補助装具(靴装着型)を用いた有疾患者での歩行評価

下肢障害のある有疾患者(ギランバレー症候群)により、開発した装具の有効性を検証した。方法は、被験者に2つの歩行測定条件で平地歩行をさせ、3次元動作解析装置にて歩行時の下肢関節角度(股・膝・足関節)を計測した。歩行条件は、①足関節補助装具を装着させた歩行(装具歩行)と、②裸足での歩行(裸足歩行)の2条件として比較した。

下肢関節角度の結果を図4に示す。足関節において、装具歩行では裸足歩行時にみられた遊脚期での下垂足がみられず、背屈補助が行われていた。また、そのことで立脚期での踵接地が可能となった。さらに、立脚初期においても適切に足関節制動が行われたことが膝・足関節角度において明らかとなった。

図4 装具歩行と裸足歩行での下肢関節角度の比較

4. 研究のまとめと今後の展望

足関節・足部の三次元的な運動を保証しつつ足関節運動の補助を行う足関節補助装具を開発した。下肢機能の低下した有疾患者による歩行評価により、歩行改善が確認でき装具の有効性を立証できた。今後、この装具をさらに進展させ、さらに軽量で簡易な足関節補助装具の実現と汎用性を高めることで歩行支援を進めたい。

《共同研究者》大分大学 理工学部 菊池武士教授

《研究協力》大分大学 阿部功様、株式会社 有薗製作所(福岡県北九州市)

研究者紹介

谷田 惣亮(保健医療技術学部 理学療法学科)

専門分野

リハビリテーション工学、徒手理学療法(OMT Kaltenborn-Evjenth International)

科学研究費採択

  • 基盤研究C「足関節制御型短下肢装具による歩行支援システムの開発と臨床評価による検証」2014-2016
  • 若手研究B「歩行速度に合わせて足関節の運動を自動調節する制御型短下肢装具」2011-2012

最近の業績

  • 「頸椎スタビライゼーションエクササイズが重心動揺に与える影響」保健医療技術学部論集(2019年)
  • 「静止スクワットにおける股関節角度の違いが体幹・下肢筋の筋活動に及ぼす影響」理学療法湖都(2018年)
  • 『ケースで学ぶ徒手理学療法クリニカルリーズニング』文光堂(2017年)
  • 「弾性体内蔵柔軟関節を持つ足関節サポータの開発」日本機械学会学術誌(2016年)
  • 「制御型短下肢装具の開発と臨床評価に関する研究 -足関節角度および角速度の分析による足関節自動制御の検証-」保健医療技術学部論集(2015年)

その他業績

ケースで学ぶ徒手理学療法クリニカルリーズニング
(文光堂)

出版物

ケースで学ぶ徒手理学療法クリニカルリーズニング
(文光堂)
2017年

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