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ジャーナリズム史から見る近代中国

名前 楊韜(文学部 中国学科)
科研費種別 特別奨励研究
研究課題 国際都市におけるメディア空間に関する歴史的研究-1930年代の上海を中心に
研究期間 2009-2011

研究目的

本研究は、具体的な歴史事例の検証を通して、メディア文化の観点からするものである。三者の連関を同時に論じるものは多くない。本研究の研究中国近代性の産出にもっともかかわったと考えられる知識人・メディア・ナ 視座の設定及びそれに伴う検討作業にいくらかの独創性があるとすれば、 ショナリズムという三つの要素及びその相互の関連性を明らかにする試み近代の産物であるマス・メディアの果たした役割、当時の知識人たちとのかである。近代中国の知識人にしても、メディアにしても、ナショナリズムにしかわり、さらにそれらと近代中国のナショナリズムとの関係を、1930-40 ても、すでに膨大な関連研究の蓄積はある。だが、多くの場合は、この三つ年代の中国(上海を中心に)という限定された歴史過程のうちに見出そうとのなかの一つに絞ったり、あるいは二者の関係を結んだりして議論を展開した試みにある。

研究内容

本研究における三つの「軸」

まず、「知識人」という「軸」に関しては、鄒韜奮を中心に生活書店にかかわる人々を取り上げた。検証にあたって、ジャーナリスト鄒韜奮の西洋体験や彼とアメリカ知識人の思想との関連について論じ、近代中国知識人が成長していくなかで経験する西洋文明の受容、及び祖国の社会状況との適合を目指した様々な実践活動を示した。鄒韜奮を中心とした生活書店の知識 人たちの思想の変遷及び実践活動は近代中国の知識人の生態の縮図である。次に、「メディア」という「軸」に関しては、生活書店を対象とした。生活書店の発展プロセスは、近代中国の出版メディアの一モデルとして看做すことができる。最後に、「ナショナリズム」という「軸」に関しては、主に生活書店の出版物に現れた言説について検証を行った。メディアの送り手の情報量と受け手の反応との不均衡というこの現象は、ナショナリズムの多様性、複雑性を示している。

研究結果

第一に、生活書店の関係人物について、中心人物とされてきた鄒韜奮だけでなく、彼の周辺にいた人物(黄炎培、胡魚之、徐伯所、杜重遠など)にも焦点を当てる必要がある。この点の検証を通して、生活書店における人的 ネットワークの具体像、及び生活書店の発展過程においてこのネットワーク が果たした役割を明らかにすることができた。また、生活書店にかかわった関係者たちのそれぞれの政治的立場や社会的な活動などから、当時の国民党・共産党・第三勢力の間の複雑な関係についても垣間見ることができた。

第二に、戦時下の状況及び生活書店側の対応を明らかにし、また生活書店の資金調達の実態を追うことによって、出版機構において「合作社」制度を実施した際の問題点及び利点を明らかにした。さらにその制度がメディア企業として行われた募金活動などのような社会活動とどのような関係にあったのかという点についても考察を加えた。

第三に、これまで日本国内外における鄒韜奮及び生活書店に関する研究の多くは、生活書店関係者らによって書かれたもの(主に回顧録類)、或い は、三聯書店関係者が整理したもの(主に資料集類)に依拠している。このような固定化した現状を打破するため、本研究では今日台湾で保存されてい る国民党側の資料をも一部使用した。また、少数だが、日本側の所蔵史料 (主に国立公文書館・アジア歴史資料センター)も使用した。このような資料を最大限活用することで、国共双方の立場から当時の状況を解明することができた。

研究者紹介

楊韜(文学部 中国学科)

専門分野

中国近現代文化史、中国近現代文学史、メディア論

科学研究費採択

平成20年度吉田秀雄記念事業財団研究助成研究代表者 平成23年度放送文化基金研究助成 研究代表者 科研費基盤研究(B)、【課題番号:24320038] 研究分担者 科研費基盤研究(B)、【課題番号:15H03176] 研究分担者 科研費基盤研究(A)、【課題番号:18H03568] 研究分担者

最近の業績

  • 『モダン・空間・異文化:東アジアの広告文化論』/朋友書店、2016年4月

その他業績

『近代中国における知識人・メディア・ナショナリズム:鄒韜奮と生活書店をめぐって』
(汲古書院)

刊行物

『近代中国における知識人・メディア・ナショナリズム:鄒韜奮と生活書店をめぐって』
(汲古書院)
2015年11月

『メディアというプリズム:映し出す中国・日本・台湾の歴史と社会』
(晃洋書房)

刊行物

『メディアというプリズム:映し出す中国・日本・台湾の歴史と社会』
(晃洋書房)
2018年1月

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