研究活動紹介
精神疾患を患う親がいる子どもへの支援
名前 | 田野中 恭子(保健医療技術学部 看護学科) |
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科研費種別 | 萌芽研究 |
研究課題 | 精神疾患を患う親がいる子どもへの支援 |
研究期間 | 2013-2015 |
研究内容
精神疾患を患う親がいる子どもの生活に関する研究
背景
◆精神疾患の親をもつ子どもの割合
イギリス 5歳~15歳の子どもの20%以上
ドイツ 約13%
日本 精神疾患患者は300万人を超え、その子どもの数も少なくないと予想される
◆先行研究
諸外国では、当該の子どもの生活や様々な影響を明らかにし、支援が進められているが、国内での研究報告は少ない。
目的
精神疾患の親がいる子どもの就学以降の生活や気持ち、必要とした支援を明らかにする。
方法
精神疾患の親がいる成人10名に半構造化インタビューを行い、質的帰納的に分析。本学学部研究倫理委員会にて承認を得て実施。
結果・考察
◆協力者
精神疾患を患う親と暮らした経験のある成人10名
(内訳:男性3・女性7 20代5・30代2・40代2・50代1)
◆子どもの経験
- 親の疾患について説明されないことによる不安と混乱
- 親の症状による被害とトラウマ
- 世話をされない生活を自分で何とかするしかない難しさ
- 親の病状による子どもの発達への影響
- 周囲の人の理解のない言動、子どもに踏み込まない関わり、等
大人になっても感じる生きにくさ
◆子どもの支えと必要とした支援
精神疾患の理解を支える
- 親の精神疾患について、子どもも説明を受け、親の病気を認識する
- 家族や専門職とともに、疾患とのつきあい方を学ぶ
子どもらしくすごせる時間の確保
- 学校への興味、友達との交流、居場所
- 家庭環境を考慮した学校生活の支援、等
子どもの気持ち、発達、生活に継続的に寄り添う
- 安全な環境の確保
- 健常な大人が寄り添う
- 子どもの気持ちをきき、共に整理しながら解決の方向を考える
教員研修の検討~精神疾患を患う親がいる子どもの理解と対応~
目的
教員が精神疾患の親をもつ子どもを理解することは、困難を抱える子どもの生きやすさにつながると考えられる。教員に当該テーマの研修を行い、その効果を明らかにし、今後の研修の方法や内容の示唆を得ることを目的とする。
方法
◆調査方法
- 校内研修1回90分。研修会終了直後1時点の参加者への無記名式質問紙調査
- 回答=4段階評価。自由記載:評価理由・感想・今後希望する研修内容
◆分析
4段階評価は単純集計。自由記載については、意味内容の類似性を比較、分類し検討
研修概要

結果・考察
◆協力者
小学校教員25名(内訳:男性7・女性18 20代10・30代5・40代4・50代6)
研修後の評価(一部)

◆感想
( )内は同一記述数
- 子どもとの関わり方の理解が進んだ(8)
- 家庭背景を含めた子どもの理解が大切と思った(6)
- 教員間の意思統一、協力が大切と思った(4)
- 保護者の理解、関係づくりが大切と思った(4)
- 専門機関とつながるようにしたい(3)
◆考察
- 総合評価は96%が『参考になった』とし、研修は教員の当該親子への理解を進め、関わり方を考える機会になったと考える。
- 方法・内容は、具体例の提示とグループ討議での経験談の共有の評価が高かった。教員間の意思統一の大切さを挙げており、同一校で研修を行う意義が示された。
研究者紹介

田野中 恭子(保健医療技術学部 看護学科)
専門分野
公衆衛生看護学
科学研究費採択
精神障害者の親をもつ子どもの生活実態の解明
最近の業績
- 「精神科ナースのアセスメント&プランニングbooks 統合失調症の看護ケア, 家族が退院を拒否する患者」 (分担執筆),中央法規出版株式会社, 2017
- 「統合失調症を患う母親と暮らした娘の経験」,佛教大 学保健医療技術学部論集第10号,2016
その他業績

刊行物
「ケアの実践とは何か 現象学からの質的研究アプローチ」
2017年9月30日

メディア関係
NHK 視点・論点「精神疾患の親がいる子どもを支えるために」
2017.2.22

新聞記事
朝日新聞「精神疾患の親がいて」
2017.1.20