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地域在住高齢者に対する抵抗訓練の必要性とその効果

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名前 得丸 敬三(保健医療技術学部 理学療法学科)
研究課題 地域在住高齢者に対する抵抗訓練の必要性とその効果

研究内容

I.地域在住高齢者の体力―運動介入の必要性についての検討―

1.はじめに

超高齢社会となった我が国では、高齢者が自立した生活を送ることが重要です。しかし誰であっても加齢によって体力が低下することに加えて、近年ではサルコペニアやダイナペニアと称される、体力の著しく低下している高齢者の存在が 注視され始めました。

高齢者の体力低下を緩和し、改善することのできる有効な手段の一つが運動 です。ではどのような「対象者」に対して、どういった「運動」を、どのような「条件」で行えば効果的なのでしょうか。

2.地域在住高齢者の体力測定

先ず高齢者の現状を知るために、一般病院に通院加療中である65歳以上の高齢者70名(男性:18名、女性52名、平均年齢75.7歳、持病はあるが地域で自立した生活が送れている)の体力を計測し、その結果を分析しました。

1)体力等の計測(図1-1)

図に示す6項目に加えて「最大歩行速 度」と「1日当たりの活動量(歩数)」を計測しました。TUGは椅子から立ち上がり3m先の目印を回って再び椅子に 座るまでの時間、PCIは通常歩行中の 心臓への負担を各々計測します。

2)各計測項目間の関係性

各計測項目間の相関係数を求めることで、各々の関係性について調べました。

3)ダイナペニアの有病率

現在提唱されている診断基準(握力:男 性<26kg、女性<18kgまたは通常歩行 速度:?0.8m/秒)に基づいて、ダイナペ ニアと診断される割合を調べました。


図I-1. 体力等の計測方法(抜粋)

図I-2. 参加者の計測結果と健常高齢者の参考値との比較(健常高齢者の参考値を100とした場合)
3.結果

1)TUGを除く6項目において、健常な日本人高齢者の参考値を下回っていました(図1-2)。

2)膝伸展筋力ー最大歩行速度ー平衡性の間に、強い~中等度の有意な相関が 認められました。下肢の筋力が移動動 作に関係しているようです(表)。

3)70名中34名(49%)がダイナペニアに 該当しました。


表. 各変数間の関係(単相関分析)
4.まとめ

今回の調査では、通院加療中の高齢者が、運動を行うべき「対象者」となり得ることが示唆されました。また高齢者の約69%が通院加療をしている(厚生労働 省)状況より、我が国には運動を行うべき高齢者が数多く存在している可能性があります。

II. 地域在住高齢者に対する高強度抵抗訓練の効果 ―筋力と運動機能への影響―

1.はじめに

筋力や運動機能の一つである歩行速度の低下は、60歳頃から顕著になること が報告されています。筋力低下は下肢で顕著に起こり、歩行速度低下の主な要因の一つであると思われます。こうした状況を改善するための「運動」の中で、筋力や筋量の増加に有効とされているのが抵抗訓練です。

2.抵抗訓練の実施

ここでは前述の研究協力者の中から34 名(男性7名、女性27名、平均年齢75.7歳)に対して、理学療法士による6種類の徒手抵抗訓練(図II - 1)を行い、その結果を分析しました。なお19名(男性5名、女性14名、 平均年齢76.0歳)が計測のみを行う対照群として参加されました。


図II-1. 下肢筋に対する徒手抵抗訓練

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1)筋力と運動機能の計測(図I-1)

開始時、12週間後(筋力のみ)、24週間後に前述の研究と同じ方法で計測しました。

2)抵抗訓練の強度判定

筋力の増加量を先行研究と比較することで、今回行った抵抗訓練の強度を推定しました。

3)訓練群におけるダイナペニアの有病率の変化

前述の研究と同じ診断基準を用いて、開始時と24週間後に調査しました。

3.結果

1)訓練群では膝伸展筋力に有意な増加 が認められた(図 || - 2))とともに、全項目が24週間で改善し(5項目には有 意差あり)、握力・最大歩行速度・長座体前屈を除く4項目では、健常高齢者の参考値を上回りました(図|| - 3)。 対照群ではいずれの項目でも有意な変化は見られませんでした。

2)今回行った抵抗訓練の強度は、最大 筋力の70%を越える高強度であったと推測されました。

3)開始時では34名中15名(44%)がダイ ナペニアに該当し、24週間後においても14名(41%)が該当していました。


図II-2. 徒手抵抗訓練による膝伸展筋力の変化

図II-3. 抵抗訓練の効果と健常高齢者の参考値との比較(健常高齢者の参考値を100とした場合)
4.まとめ

「10回×1セット、筋収縮時間7秒、週1~2 回、24週間」といった「条件」で行われる高強度抵抗訓練は、地域在住高齢者の筋力と運動機能を改善しましたが、ダイナペニア の減少には至りませんでした。

研究者紹介

得丸 敬三(保健医療技術学部 理学療法学科)

専門分野

運動器系理学療法学、地域リハビリテーション

最近の業績

  • Tokumaru K, et al.: The effects of manual resistance training on improving muscle strength of the lower extremities of the community dwelling elderly. J Phys Ther Sci 23:237-242, 2011.
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