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若者の貧困と生活困窮者支援

名前 加美 嘉史(社会福祉学部 社会福祉学科)
科研費種別 基盤研究(C)
研究課題 「若者の貧困と生活困窮者支援」
研究期間 2014~2017年度

研究内容

「シェルター」から見える若者の「貧困」

2017年6月に厚生労働省が国民生活基礎調査(2015年)をもとに発表し た「相対的貧困率」は15.6%、「子どもの貧困率」は13.9%で7人に1人の子どもが「貧困線」を下回る所得水準であった。特に「ひとり親家庭の子どもの貧困率」は50.8%で世界的にも突出して高い状況にある。2017年6月にユニセフが発表した報告書『レポートカード14 未来を築く:先進国の子どもたちと 持続可能な開発目標(SDGs)』でも「貧困」「不平等」に関する日本の指標は 概ね下位で、先進諸国の中でも日本の「貧困」削減の対策は大きく立ち遅れている現状にある。

現在まで浄土宗が続いているのは、法然が成し遂げた救いが800年間、人々を魅了し続けたからに他ならない。その意味で法然研究は重要であると言える。

このように近年は貧困問題への関心は高まっているが、貧困を予防するための施策、特に低家賃住宅や住宅手当といった居住保障施策は不十分で、「ホームレス」問題を生み出す大きな要因にもなっている。欧米諸国では"homeless people"は「難民」や自然災害等で避難生活を送っている人々、知人宅等に身を寄せている人々など「適切な住環境にない状態」として捉えるのが一般的だが、日本では路上生活者のみを「ホームレス」と定義している。その結果、定義からこぼれ落ちた「ホームレス」は支援から取り残されている。2008年秋のリーマン・ショックによって仕事と住居を喪失し、ホームレス状態に陥った派遣労働者の姿はその一例だが、近年はネットカフェやファーストフード店、知人宅などを転々している「目に見えにくいホームレス」【表1】の存在が指摘されている。


【図1】精神疾患及び精神障がいの症状あり(n=597)

こうした問題意識から現在、国の緊急一時宿泊事業(シェルター事業、現在は一時生活支援事業)として実施されている京都市のシェルター事業の利用者実態調査を行っている。京都市のシェルターは若年層から高齢者、女性、刑務所出所者、障がい者など住居喪失状態に陥ったさまざまな生活困窮者の"駆け込み寺"としての機能を担っているが、その中でも特に若年層に着目し、研究に取り組んでいる。 市のシェルター利用者のうち特に40歳未満(146名, 2012年度)のケース 記録を詳細に分析したところ、最終学歴「中卒・高校中退」は43.8%、「親と音信不通」は48.6%、「精神疾患・精神障がいの症状のある者」35.6%など、幾つもの生活課題が重層化・複合化している実態が明らかになった【図1】。若年層の多くには「貧困の世代間連鎖と教育からの排除」「家庭崩壊」「成人後 の不安定な雇用環境」「精神的不安定さ、パワーレス状態」といった傾向が共通して見られた【資料:『京都新聞』2014年10月27日】。

2015年度からはシェルター利用者等のインタビュー調査を開始し、18名の住居喪失経験者の語りから「貧困」に至るプロセスとさまざまな困難 性の形成要因、シェルターでの支援のあり方などについて生活史研究の方法で検討を行っている。多くの人は親からの暴力・虐待、自傷行為、劣悪 な労働環境、明日の見えない絶望的な日々での無力感、他者に対する不信、 アイデンティティ喪失といった経験を語っていた。このような生活困窮者が抱えている重層的な困難を軽減し、パワーレス状態からの回復のためにソーシャルワーカーが果たす役割は大きいと考える。なお、このインタ ビュー調査の研究会にはホームレスの人々への炊き出し【写真①】【京都 新聞】や夜回り活動【写真②】に取り組む「地域福祉フィールドワーク・ 京都見守りの会」の学生や社会福祉学部学生も参加し、共に検討を行っている。


【写真①】炊き出しの様子

【写真②】深夜の京都駅

【京都新聞:2015年1月11日】

研究者紹介

加美 嘉史(社会福祉学部 社会福祉学科)

専門分野

貧困問題、公的扶助論

科学研究費採択

『緊急一時宿泊事業(シェルター事業)の実態 と支援に関する総合的研究』

最近の業績

  • 【著書】吉永純・布川 日佐史・加美嘉史編著(2016)『現代の貧困と公的扶助」高菅出版
  • 【論文】「生活困窮者に対する就労支援 ~ソーシャルワークの課題と可能性~」『ソーシャルワーク研究』Vo142,No.4, 2017年

その他業績

『現代の貧困と公的扶助』

刊行物

『現代の貧困と公的扶助』

「生活困窮者に対する就労支援 ーソーシャルワークの課題と可能性―」

刊行物

「生活困窮者に対する就労支援 ーソーシャルワークの課題と可能性―」

京都新聞 「京都市の緊急一時宿事業(シェルター)利用者の4分の1が若年層」

新聞記事

京都新聞 「京都市の緊急一時宿事業(シェルター)利用者の4分の1が若年層」
2014年10月27日

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