研究活動紹介
佛教大学で実施しているペアレントトレーニングプログラム
名前 | 免田 賢(教育学部 臨床心理学科) |
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研究課題 | ADHDに対するペアレントトレーニ ングの効果 |
研究内容
1.はじめに
ペアレントトレーニングとは、親が自分の子どもに対して、効果的な対応 を家庭で行うことで、子どもの発達を最大限に引き出せるようにする方法です。そのために、スタッフは親と話し合い、親に子育ての工夫を実践してもらいます。
人はみな生まれつき、ものの見方やとらえ方に個性があります。また1つ1つの能力にばらつきがあります。顔が違うように発達のしかたに違いがあります。これを発達特性といいます。特に、自閉症スペクトラム症(ASD)や注意欠 如多動症(ADHD)のある子どもは、偏った発達特性のため子育てがむずかしいといわれます。親は、子どもに対してどのように対応してよいかわからず、つい注意や叱ってばかりになります。また、子育てに自信をなくし、親として失格だと思い込み、子どもにうまく対応できないという悪循環がおこります。結果として、子どもも持っている力を十分に発揮できなくなってしまいます。
そこで、ひとりひとりの子どもにあった、効果的な子育ての仕方を親に講義し、家庭ごとに親が子どもに実践します。そして親に子どもが実際に変化することを実感していただきます。この方法の基本となっているのが、認知・行動療法です。つまり、親にいくつかの行動に絞って、子どもに対する有効なセラピストになってもらうのです。
2.方法
プログラムは通常、5-10セッションで実施します(表1)。表2には、参加者の具体例を示しました。このプログラムでは3歳から10歳までの子どもが対象です。知的にハンディキャップがある子どもも含まれています。
プログラムではまず子育ての理論を学びます(図1)。講義を受けた後に、 2、3人のグループに分かれて、自分の子どもについて身につけてもらいたいこと、困っていることを話し合っていきます。表3には参加者が取り上げた行動を示しました。また、理論に基づいてどのような対応技術を使うか、子どもにどう関わるかも話し合って決めます。

表1 ペアレントトレーニングのセッション内容


図1 ペアレントトレーニングの様子

3.結果
図2に子どもの標的行動の変化について示しました。Preはプログラム参加前、Postはプログラム参加後の子どもの行動変標化です。子どものどの行動もプログラム終了時には改善することが明らかになっています。表4には、子どもの全般的な行動について調べるCBCL(子どもの行動チェックリスト)の結果を示しました。その結果、プログラム終了時には子どもの行動が有意に改善しました。また、表5には、QRS(親の養育ストレ ス)得点とBDI(親の抑うつ)得点を示しました。プログラムに参加することで、親の子育てストレスは低くなり、抑うつ気分も軽減することが示されました。

図2 標的行動の100段階達成度
4.考察
ペアレントトレーニングは、効果が検証されたエビデンスのある治療技法といえます。佛教大学では、学校の先生に行動技法を学んでもらうティーチャートレーニングも実施しています。いろいろなニーズのある子ども、そして子育てに悩む親のために、今後さらに効果のあるプログラムの研究を続けていきます。
研究者紹介

免田 賢(教育学部 臨床心理学科)
専門分野
認知・行動療法、臨床心理学
最近の業績
- 免田賢/ADHDに対するサマートリートメントプログラムにおけるペアレントトレーニングの長期効果について/発達障害研究、第37巻、第3号、247-258 2015年
- 免田賢 他/ADHD単独群とASD合併群のサマー・トリー トメント・プログラムとペアレントトレーニングの効果、小児の精神と神経、第55巻、第1号、25-38 2015年