研究叢書
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研究叢書
研究叢書は、本学の専任教員や大学院を修了した者等の博士学位論文や学術雑誌に発表した論文を体系的に集成したものなどを制作・刊行しています。
なお、研究叢書については、創刊から19年間にわたり、刊行を続けてまいりましたが、諸般の事情に鑑み、令和7年3月をもちまして刊行を終了いたしました。
長きにわたり、ご支援を賜りましたこと感謝申し上げます。
佛教大学研究叢書一覧
新たなワークキャンプ実践の可能性

2025年3月刊
ミネルヴァ書房
ワークキャンプとは、参加者の主体的な意思を前提として、労働と宿泊という活動形態を伴いながら、社会課題の解決を目指したボランティア活動である。本書では、サービス・ラーニングにおけるボランティア活動の一形態として、ワークキャンプに注目する。ワークキャンプの学習論上の意義・課題を丁寧に整理しつつ、著者が十年来参与観察を続けるワークキャンプにおける参加者の学びを分析したうえで、サービス・ラーニングとしての新たなワークキャンプ実践の可能性を提起する。
相模大山御師の「行動文化」と身分

2025年3月刊
法藏館
関東の山岳霊場には冨士講・三峯講・武州御嶽講など多数の参詣が結成され大山講はその一つである。これら参詣講の発展は、修験僧の霊験譚や縁起の作成・流布及び御師の活動などに多くを負う。本書は、御師の活動をお札配布や初穂収集に留めず、御師の様ざまな活動を「行動文化」と捉えた。他方で、山法で御師を「遊民」とし、別当のもとに護摩取次を一元化し、御師が統制された。そのことで両者間の緊張関係が内在し、参詣講の隆盛に繋がったと捉えた。
字音形態素から見る語構成と節構成の研究

2024年3月刊
ミネルヴァ書房
本書は、日本語における字音形態素による語構成と節構成それぞれの様相とその連続性について考察したものである。従来の語構成が、和語中心であり、形態素による節構成には踏み込まなかった点を批判的に受け止め、「感・性・式・風」などの形式を中心に、字音形態素における語構成から節構成への移行・発展の内実について詳細に論述した。また、日中対照研究の観点から、日本語における字音形態素の特徴についても記述した。
医療生協の事業と運動に関する研究 -「地域共生社会」への対抗軸としての「人権・協同・共同化」-

2023年2月刊
旬報社
本書は、生活協同組合(生協)、特に医療や介護を事業として行う生協である医療生協の組織的特徴や歴史的変遷を振り返りながら、地域包括ケアシステム・地域共生社会の実現に資する役割を検討したものである。本研究から、今日の新自由主義的社会体制における「人間らしいくらし」の保障に向けて、「人権・協同・共同化」の視座をもつ「医療生協の事業と運動」という対抗軸が、その一翼を担いうることを示すものとなっている。
上杉謙信の崇敬と祭祀

2023年3月刊
清文堂
「義」の武将といわれる上杉謙信。その信念「筋目」「仏法と王法の回復」を祈願文から読み解き、また謙信が法体となる過程を明らかにする。米沢藩では謙信を仏式の「御堂」で祭祀したが、明治維新後は神式の「上杉神社」の祭神へと転化していく。景勝による御堂建立から、御堂での宗教儀礼や火災による御堂の再建、明治期の上杉神社建立の過程、神社の遙拝式等から、米沢藩にとって謙信が精神的な支柱であったことを明らかにする。
幕末維新期大名家における蒸気船の導入と運用

2022年3月刊
清文堂
ペリー来航後、幕府や大名家は、軍事的な必要性から、莫大な経費を使ってこぞって蒸気船を獲得していった。ただし、それらは港に備えておけばいいというものではない。蒸気船は運転して初めて意味を成す。本書は、幕末維新期に大名家が所有した蒸気船について、従来あまり着目されてこなかった、運転技術の習得や石炭の補給など、運用する上で避けては通れない諸問題を解明する。
「教育評価」の基礎的研究―「シカゴ学派」に学ぶ―

2022年3月刊
ミネルヴァ書房
「教育評価」概念のルーツを創発した「シカゴ学派」の理論的営為を原典に即して丹念に読み解くとともに、その理論的基盤から展開された教育改革構想を現地調査を踏まえて詳細に紹介した。本書によって示された基礎研究の成果は、現在の日本の教育改革にも、大きな示唆を与えるであろう。
出土文字資料と宗教文化

2022年2月刊
思文閣出版
発掘調査によって出土した考古遺物から、仏教・儒教・神祇信仰・陰陽道など諸宗教の古代の姿や信仰の実修を考察。遺跡の種類や意味、出土状況等を考察する考古学と、資料に記された文字を読み解く文献学、ふたつの知見で古代文化に迫る。
介護保険制度と障害者福祉制度の 「制度間調整」―介護保険優先原則をめぐる「浅田訴訟」を手掛かりに―

2021年3月刊
旬報社
現行の介護保険制度と障害者福祉制度との適用関係では、障害者が六五歳を迎えることで介護保険制度の対象となり、自己負担の増加やサービスの質の低下が起き、当事者にとって大きな問題となっている。本書では、介護保険優先原則の問題を分析し、介護保険制度と障害者福祉制度との適用関係をめぐる問題の根本的な原因を解明し、その解決策を追究する。
流行神―民間信仰におけるハヤリ・スタリとそのメカニズム―

2021年3月刊
法藏館
流行神はどのように現れるのか。近世から近現代に顕現したプロセスを寺社、地域、参拝者、歴史や民間信仰との関係等から解明する。
算数・数学における関数概念の認識発達を培う理論と実践

2020年6月刊
ミネルヴァ書房
関数概念は、算数・数学における学習内容の中でも中心的なものの一つである。これまで、児童生徒の関数学習に関して多くの研究がなされてきたが、現在も課題が残る。本書では、この課題を打開するために、児童生徒の認知・認識を考慮した関数の学習モデルを構築し、関数理解を促進するための途上概念を特定した。その上で、途上概念を形成するための学習の枠組みと効果を示す。
唐中期浄土教における善導流の諸相―『念仏三昧宝王論』と『念仏鏡』を中心に―

2020年2月刊
法藏館
中国仏教史変革の時代に当たる唐中期に焦点を当て、とりわけ善導流の浄土教家の思想的特徴を中心に考察することで、唐中期仏教全体の様相を浮き彫りにしていく。
いじめと規範意識の社会学―調査からみた規範意識の特徴と変化―

2020年2月刊
ミネルヴァ書房
いじめ経験は、青少年の対人意識や対人関係、規範意識に大きく影響を与えている。将来の社会を担う子どもたちが、どのような対人関係のなかでいじめを意識し、その影響を受けているのか。このいじめの歯止めとなり得るルールがどのように意識されているのか。本書では、調査をもとに、いじめとルール(規範意識)を中心に学校社会における児童生徒のいじめ現象の実態を社会学の視点から考察する。
摂関家領土佐国幡多荘再考

2019年3月刊
清文堂出版
広大と思われていた幡多荘。しかし、一条家と現地の論理は異なり、一条兼良・教房父子を当惑させる。さりとて、下向した教房も全く忌避されていたわけではなく、興福寺における出家が決まっていた教房の子・房家を擁立し、三国司家の一つとしての土佐一条家が確立する。
田中久重と技術の継承―時計からからくり人形、そして電信機―

2019年2月刊
思文閣出版
江戸後期から明治初期にかけ、職人としてからくり人形や万年時計と手掛け、技術者・起業家として実用電信機の製造を果たした田中久重(1799-1881)。
彼の生涯を追うことを通じて、日本の各地で活躍していた時計職人たちの技術が引き継がれ、からくり人形等に伝播し、さらに明治維新後は職人たちが技術者として電信機に代表される産業技術の近代化に貢献し、やがては今日のIT技術につながっていく【技術の継承】の実像に迫る。
社会学理論における文化概念の変遷―文化と社会の相互浸透をめぐるパーソンズ文化理論の今日的意義―

2019年2月刊
ミネルヴァ書房
本書は、ドイツ文化社会学、機能主義的社会学、文化論的転回に着目し、それぞれの「文化概念の特性」を時系列に考察するとともに、機能主義的社会学を代表するパーソンズが構想した文化理論の今日的意義を明らかにする。
また、文化概念の特性を「関係的性質」つまり文化の役割、作用を社会構造との関連のうちに捉えることで文化決定論に陥りがちな文化論的展開を乗り越える可能性も論究する。
意志表現をめぐる日中対照研究

2018年2月刊
東方書店
本書は、意志表現をめぐる日本語と中国語との対照研究を通じて、両者のそれぞれの形式・意味・機能における特徴を明らかにし、それに基づき、意志表現の全体像を見据えて両言語の共通点と相違点を明らかにすることを目的としている。論述対象は、日本語の「シタイ」「シヨウ」「スル」「スルツモリダ」、中国語の「要」「想」「動詞無標形」の7つに絞っている。用例は、文学作品の会話部分やテレビドラマの台詞などから取り上げ、「話し手の意志」のわかり易いものとした。本書では、意志表現形式の選択において、中国語のほうは聞き手との関係よりも、事柄の内容に大きく左右されているのに対し、日本語のほうは聞き手との関係に大きく左右されていることを明らかにしている。
Reading Nabokov's Framed Landscape

2018年2月刊
英宝社
『ナボコフの、窓のフレームにおさめられた(同時に「額」におさめられた)風景を読む』という本書のタイトルが暗示するように、ロシア生まれの露・英語作家ウラジーミル・ナボコフの文章は、絵筆で描かれた絵画のアナロジーで読むことができる。本書は、ナボコフの諸作品について、多様な「絵画的視点」を通して、とりわけエクフラシス(狭義では、視覚芸術を言語で描写すること)という観点から論じると同時に、ナボコフにおける「窓からの眺め」のテーマが、いかに「視覚」という重要なテーマと結びつきうるか、ということを解き明かそうとしている。
障害者相談支援における「実践課題の政策化」の理論形成―ソーシャルワークと自治体福祉政策の発展―

2018年2月刊
ミネルヴァ書房
障害者相談支援における自治体の現状、政策上の問題点、相談支援事業の構造、ソーシャルワーカーの質の向上などの現状を分析・整理する。自治体レベル、政策レベルでの課題にたいする解決方法を模索、福祉政策の発展を促す。
豊臣政権の東国政策と徳川氏

2017年2月刊
思文閣出版
近年発見された「九月一七日付家康書状」。そこから新たに見えてきた豊臣と徳川の関係とは...。本書は、新出史料の分析を中心に、豊臣・徳川の政治的関係を見直しつつ、豊臣政権の東国政策の一端を明らかにしようとするものである。第五回「徳川奨励賞」を授与された研究をもとに、これまで「惣無事」論や「取次」論を語る際に前提とされてきた通説をくつがえすことを試みた意欲作。
From Skepticism to Self-Parodies: The Transition in Joseph Conrad's Works

2017年2月刊
英宝社
ジョウゼフ・コンラッド(Joseph Conrad)は、その小説技法の巧みさや深い人間洞察から、英文学において小説の「偉大な伝統」の創始者のうち一人であると評価されてきた。近年はポストコロニアル批評の隆盛もあって、彼の作品の考察は年々進められている。だが、コンラッドは「偉大」な植民地主義批判者だというような、重苦しい評価にとどめておくだけで良いのか。本書では、コンラッドの語りの巧みさに留意しつつ、初期作の懐疑性を重んじる作風から、後期作品の自己パロディへと軽やかに至る変遷を考察した。
「学習成果の高い授業」に求められる戦略的思考―ゲーム理論による「優れた教師」の実践例の分析―

2017年2月刊
ミネルヴァ書房
本書は、「優れた小学校教師」(恒常的に態度得点の高い教師)四名による走り幅跳びの授業中の教授技術を観察・分析し、ゲーム理論に基づき、六つの戦略的思考(インセンティブ、スクリーニング、シグナリング、コミットメント、ロック・イン、モニタリング)の発揮の有無と、その思考の共通性・異質性を分析したものである。「優れた教師」が、授業中にどのような戦略的思考に基づき実践的知識を運用しているのかを明らかにした一冊。
宇佐八幡神話言説の研究――『八幡宇佐宮御託宣集』を読む

2016年2月刊
法藏館
八幡神言説の歴史を、中世宇佐宮の神典『八幡宇佐宮御託宣集』から読み解き、中世に見出された"新たな八幡信仰"の姿を問うことで、宗教思想史研究の新地平を切り拓いた気鋭の論考。
没理想論争とその影響

2016年2月刊
思文閣出版
明治の文学者たちは、イデー(目に見える現実の世界を越えたところに存在する物事の本質)をどのように把握し、表現しようとしたのか。
明治24年以降、『早稲田文学』と『しがらみ草紙』を舞台に坪内逍遥と森鴎外との間で繰り広げられた「没理想論争」を軸に、明治の文学者たちがイデーと現実との関係をどのように捉えようとしたのか、またこの論争が文学史にどう影響したのかをたどる。
大学全入時代における進路意識と進路形成―なぜ四年制大学に進学しないのか―

2016年2月刊
ミネルヴァ書房
大学大衆化が叫ばれ、大学全入時代とも言われる現代において、なぜ大学進学を回避するのか――。教育をめぐる格差や、大学進学費用の負担などこれまでの議論に加えて、戦後の私立大学政策と近年の大卒就職問題を概観、整理し、進路多様校生徒へのアンケート、インタビュー調査から、大学全入時代による大学教育全体への不信感や、卒業後の雇用不安が高まるなかでリスクヘッジとして大学進学を回避するメンタリティを明らかにする。
高校相談活動におけるコーディネーターとしての教師の役割―その可能性と課題―

2015年1月刊
ミネルヴァ書房
「教育の荒廃」「さまざまな問題に揺れる教育の現場」「教育再生」、そして「人間関係の希薄化」「価値の多様化」「格差社会」という社会のなかで、「いじめ」に代表されるような現代社会(大人)における矛盾や混乱が学校という場で起こっている。そこで、高校における困難をかかえた生徒援助について、速やかに解決した円滑事例と、解決が難しかった困難事例を比較することによって、コーディネーターとしての教師の対応を問い、その役割を検討する。
中国におけるモンゴル民族の学校教育

2015年2月刊
ミネルヴァ書房
大多数の漢民族の他に55の少数民族を抱える中国では、少数民族の若者たちの民族意識が下がっている。国家統一をめざした中国は、少数民族にどのような教育政策をとってきたのか。また、少数民族者が貧困やアルコール依存から脱し、民族独自の文化に誇りを持つ方策とは何か。
本書は、著者自身の内モンゴルでの教員体験に基づき、現地の意識調査アンケートや史料を駆使して現代中国の教育課題を描く。
碇の文化史

2015年2月刊
思文閣出版
船や海事の象徴としてよく表される碇(いかり)だが、その先行研究は希薄であった。
本書では、先史の時代から石や木で作られた碇が、鉄の錨(いかり)へと移り変わっていくまでの形態上の変化と発展の系譜をたどる。
歴史学という大きな枠組みの中から、時には水中考古学の見地から遺物をとらえ、またあるときは文献資料や絵画資料を駆使し、民俗例や伝承、風俗といったものも絡めて、碇をただ単なる繋船具というだけでなく、碇の変遷を通して見えてくる文化史を浮き彫りにしていく一書。
黄檗禅と浄土教―萬福寺第四祖獨湛の思想と行動―

2014年2月刊
法藏館
江戸時代に隠元により開かれた禅宗の一派、黄檗宗の第四祖獨湛性瑩の思想と行動を体系的に考究した初めての書。禅僧でありつつ浄土思想や念仏を重視した彼の教学を、著作・語録・絵画などから明らかにする。
古事記 変貌する世界―構造論的分析批判―

2014年3月刊
ミネルヴァ書房
従来の「古事記」研究では、構造化することによって、登場する世界―「黄泉国」、「高天原」、「葦原中国」、「根堅州国」、「綿津見神宮」の位置が固定化されていた。しかし、物語が展開していく中で、神々が変貌し、それによって神々が体験していく世界そのものも変貌する。それは世界関係の流動性をも意味する。
本書は、世界の変貌を見ていくことで、「古事記」研究の構造論的分析を批判する試みである。「古事記」編纂1300年後の現代に生まれた新たな研究書。
近世京都近郊の村と百姓

2014年2月刊
思文閣出版
本書では、京都近郊に位置し、公家・寺院領を中心とする相給村落であった山城国乙訓郡石見上里村(現・京都市西京区大原野石見、上里)と、同村百姓にして公家家来でもあり、庄屋・医師・手習師匠としても活動した大島家を研究対象にとりあげる。
建前と実態という「表裏」の運用により、社会の「穏便」を実現しようとする意識や調整に着目して、近世百姓の変容と実態を多面的に明らかにする。
スサノヲの変貌―古代から中世へ―

2013年2月刊
法藏館
中世のスサノヲは、ただアマテラスに対抗するのみの存在ではなかった。この神は独特な神格をもち、変貌を続けている。既存の研究によって取り扱われなかったスサノヲの隠されている姿を考察することは、古代のみならず中世神話研究においても、既存の研究より一歩踏み出す方向を提示してくれるものと思われる。そこで、本研究ではスサノヲを通して最新の神話研究の成果を踏まえつつ、さらに新たな神話研究の方向性までを論じている。
早池峰岳神楽の継承と伝播

2013年2月刊
思文閣出版
早池峰神楽とは、岩手県北上高地の主峰早池峰山麓の二つの集落に伝承される岳神楽と大償神楽の総称である。いずれも成立より500年以上伝承されていることがわかっており、2010年にユネスコ無形文化遺産に登録されている。本書は岳神楽と、その流れを汲む神楽に着目し、その師弟構造と機能、さらに岳神楽の継承と伝播がどのような形でなされてきたのかについて、時代背景を踏まえながら解き明かす。
三池炭鉱炭じん爆発事故に見る災害福祉の視座―生活問題と社会政策に残された課題―

2012年10月刊
ミネルヴァ書房
わが国戦後最大の労働災害事故である三池炭鉱三川鉱炭じん爆発事故(1983〔昭和38〕年、死者458名)を取り上げ、被災者世帯の半世紀近くに及ぶ苦難の生活状況を明らかにするとともに、残された生存者(839名)も健康被害に何故苦しめられ、何故不十分極まりない救済しかされなかったのか。本書は、その理由・背景を追及することによって、労働災害に対し果たした(果たしえなかった)「社会福祉の視座」を、被災者の「生活問題」の側面から論述する。
近世上方歌舞伎と堺

2012年2月刊
思文閣出版
本書は、従来より盛んである元禄期を中心とした近世上方歌舞伎研究から、少し時代を移した元禄期以降の展開、特に上方歌舞伎が特質を大きく転換した化政期から幕末期の実態を究明する。さらに上方歌舞伎の地域的展開や興行史的検討という観点についても考察するが、こうした課題に取り組むうえで重要な興行地として、堺を取り上げる。
堺における歌舞伎興行の全貌を解明することで、京・大坂の興行、さらには大芝居、中ゥ芝居の役者たちの動向をも照射し、上方歌舞伎の地域的展開の一端を明らかにした。
日英のフィールド調査から考える学校図書館における特別支援教育のあり方

2012年2月刊
ミネルヴァ書房
イギリス・日本両国の学校司書や教職員へのフィールド調査をもとに、小・中学校の学校図書館における、LD・ADHD・高機能自閉症など特別な教育的ニーズをもつ児童・生徒への支援のあり方を考える。 学校図書館における人的資源の配置状況のほか、物理的な施設設備の整備状況、法的・社会的な仕組みなどを勘案しつつ、特別な支援の実施に伴う現状の問題点とは何か、特別な支援を進めるうえでの学校司書へのサポート体制、学校図書館における特別な支援の指針について検討する。
本書の元となった論文は、第38回学校図書館賞受賞(2008年)のほか、第38回日本図書館情報学会奨励賞(2009年)受賞。
へき地保育の展望

2012年3月刊
高菅出版
序章 過疎地、へき地を対象とした保育研究の課題と展望
第1章 戦前農繁期託児所の誕生と戦後へき地・季節保育所制度への変遷(農村の生活問題と生活保障としての「託児所」の成り立ち;昭和初期の農村における児童保護(1926年~1930年);戦時体制下直前の農村における児童保護(1935年~1937年))
第2章 戦前農繁期託児所の消滅とへき地・季節保育所(戦前農繁期託児所の保育実践から受け継ぐべき現代の保育実践の視点;戦前農繁期託児所の消滅とへき地・季節保育所制度の成り立ち)
第3章 過疎の誕生と保育所の変遷(「過疎」概念の誕生と農村福祉研究・事業;過疎地特有の保育問題と保育運動の発展;過疎地域保有所が抱える諸課題と保育問題)
第4章 保育保障と今後のへき地保育所制度(群馬県保育草創記(1947年~1964年)における保育行政と保育所;児童福祉法立法の制度設計と現在のへき地保育所をめぐる動き;保育保証と現在の保育制度の展開)
古代東北仏教史研究

2011年3月刊
法藏館
7~9世紀を対象に東北地方における仏教受容のあり方と特色、仏教の果たした役割について考察。
中国五代国家論

2010年11月刊
思文閣出版
中国史において五代十国時代は、一般に分裂・混乱期とされてきた。しかし本当に単なる無秩序・不条理の時代であったのか。各国間の均衡を保つ、何らかの秩序が存在していたとは考えられないか。
本書は、当該期に働く国際的な秩序構造に目をむける。第一部「天下のうち」篇では「平王」などの爵位や藩鎮制、国書の検討から「中国」―諸国間の支配関係を考察し、第二部「天下のそと」篇では中国の権力構造に含み込まれつつも、海上に新たな国際秩序をつくろうとした呉越国に焦点をあてて論じる。
既成の史観をはなれ、五代十国時代における「国家」の構造を明らかにする意欲作。
斎藤喜博教育思想の研究

2011年3月刊
ミネルヴァ書房
群馬県南端の小さな学校の校長となり、以降、「島小教育」の名で教育史に残る実践を展開した斎藤喜博。本書では、「横口・介入授業」「子どもの可能性」や「ゆさぶり」といった言葉や授業実践にみられる斎藤の教育思想、およびその変遷過程と実践について、前半生を振り返りながら歴史的にたどり、その特質と意義を考察する。
韓国「併合」前後の教育政策と日本

2010年3月刊
思文閣出版
本書は第二次日韓協約から第一次朝鮮教育令発布後、すなわち韓国「併合」前後の期間に着目し、当該期の修身教科書への影響や教員の養成・日本人教員の配置など、現地における学校教育をとりあつかう。
日本の関与に対して朝鮮民衆の様々な対応と抵抗が展開され、その結果日本側の植民地教育政策がどのような変容を迫られたのかを、多彩な史料に基づき明らかにする。
韓国併合100年を迎えるいま、教育という観点から、日本内地と旧韓国・朝鮮の関連を再考する。
近代火葬の民俗学

2010年3月刊
法藏館
近代になり土葬地区がどのように火葬を受容したのか。日本における死生観の様相を考察する。
地域祭祀の日韓比較民俗論

2010年3月刊
人文書院
岡山県新見と韓国東海岸、二つの地域それぞれに数百年前より伝わる伝統的祭祀の比較民俗論。長年のフィールドワークに基づき、近代化された地域における伝統の維持を、共同体の変容から分析する。
近代都市の形成と在日朝鮮人

2009年3月刊
人文書院
戦前の京都市を事例に、近代都市の形成における在日朝鮮人の関わりを、丹念な史料調査に基づいた実証的データにより、初めて掘り起こす労作。
金瓶梅研究

2009年3月刊
思文閣出版
『水滸伝』『西遊記』『三国志演義』とならんで中国四大奇書の一つとされる『金瓶梅』。この作者不詳の小説は明の万暦初年の成立とされ、『水滸伝』中の武松物語を百回に敷衍したものである。これまで淫書と目され禁書扱いであったためか、他の小説と比べて最もその研究が遅れていた。本書では、明代の政治・社会の腐敗を暴露したこの小説を、執筆時代・素材・用語・服装など様々な側面から考察し明らかにする。
若年就労問題と学力の比較教育社会学

2009年3月刊
ミネルヴァ書房
「労働弱者」に関する比較社会学的研究。「労働弱者」を生み出すメカニズムについて、英、米、日三カ国における比較分析から、その特徴を明らかにする。
平安期の願文と仏教的世界観

2008年3月刊
思文閣出版
願文とは、法会の主催者である願主が、仏に願意を述べる文章である。従来は、定型句をつかった儀礼的な言葉に過ぎないとみなされ、その内容については分析されてこなかった。 しかし、本書では、願文自体が何を語ろうとしているのか分析することで、天皇から中下級貴族・女性・僧侶にいたる人々の仏教理解や具体的信仰のあり方、所属する社会集団内部でのそれぞれの構成員が果たした公共的な役割、寺院や僧侶と世俗社会との関わり方、具体的な宗教的実践のあり方を明らかにする。
学僧の教学、在俗者たちの現世利益的傾向、ごく一部の熱烈な仏教者の存在といった、かつての信仰のカテゴリーを再検討し、新たな仏教史の視座を提示する意欲的な一書。
森林文化の社会学

2008年3月刊
ミネルヴァ書房
近代日本における森林文化の変容とその背景、近代日本における森林文化の変容とその背景を社会学的に分析する。それはまた、理論的検討のみならず、実証研究として森林文化に迫る試みでもある。
児童養護問題の構造とその対策体系―児童福祉の位置と役割―

2008年3月刊
高菅出版
第1章 児童養護問題の歴史的考察―保育問題との共通性・連続性を踏まえて
第2章 児童養護問題の認識と分析方法の検討―先行研究を踏まえて
第3章 虐待事件にみる児童養護問題の階層性・地域性
第4章 児童養護施設入所児童とその家庭に現れている児童養護問題
第5章 子どもと家庭の生活問題の一環としての児童養護問題
第6章 児童養護問題の対策体系と前提となる対策
第7章 児童養護問題対策の中心である社会保障・社会福祉
第8章 児童養護問題対策における児童福祉の位置と養護・保育の役割・課題
近世社会と百姓成立―構造論的研究―

2007年3月刊
思文閣出版
近世社会において零細な高持百姓はいかにして自らの生活や農耕の日常を凌いでいたのか、経営の自立と再生産を可能としていた「条件」は何であったのか。近世社会における「百姓成立」について、領主権力による「成立」の構造を再検証し、百姓の観点から百姓自らが創出した「成立」の条件と構造を年貢負担と村内の組編成、質入の検討により解明。