第2回研究会開催報告(法然仏教の多角的研究)
日 時:2023年5月26日(金)16:30~17:50
開催形式:オンライン開催(Zoom)
参加者 :16名
概 要
<研究発表>
発表者:一ノ瀬和夫(学術研究員)
テーマ:『往生要集』と法然浄土思想
法然の『往生要集』釈書は、四種存在する。それをめぐって、多くの研究が積み重ねられてきているが、その歴史には一つの分岐点がある。1990年代に林田康順氏によって提起された、『要集』助念門の「惣結要行部」釈は後の時代の増補であるという説である。こうして、それ以後の研究は、この説を前提とするところから始まることになるが、それが定説として全面的に受け入れられているのかというと、そうとも言えない。そこで、林田説登場以前の代表的研究、及びそれ以後の研究を概観し、問題点を整理した上で、『往生要集詮要』、『往生要集釈』に絞って、その論理構造を分析し、二種類ある惣結要行部釈(林田氏命名の「A釈」、「B釈」)の意味と働きを検討した。結論として、林田氏の指摘通り、惣結要行「B」釈は後世に追加されたものであることは確実で、法然の『要集』解釈を最も正確に反映していると思われるのは、「B釈」を含まない『往生要集詮要』であり、後世の増補は、菩提心批判への対応であった可能性もあることを示唆した。
<各班進捗状況発表>
【第一部門】 法然文献班 元亨版『和語燈録』本文・現代語訳対照本作成
協力者を募り推進環境を整えている。
【第一部門】 逆修説法班 『逆修説法』諸本対照本作成、古本『漢語燈録』を中心とする本文批判
今後の活動について、主に以下の3点で進めることとなった。
①逆修説法を深く読む
②論文や紀要で発表
③本文批判
【第一部門】 『選択集』諸本研究班 信重院蔵『選択集』諸本等の調査および研究
諸本の対象作業中。今年度中に龍谷大、大谷大蔵本を調査予定。
【第二部門】 『摧邪輪』班 明恵『摧邪輪』寛永版訓読・現代語訳
「巻中」の再検討と、「巻下」の訳注作業中。
【第二部門】 『徹選択集』研究班 『徹選択本願念仏集』の注釈類の翻刻・現代語訳
『研究紀要』第10号掲載を目標に訳注作業中。良忠『徹選択鈔』と妙瑞『徹選択集私志記』を参照。
【第二部門】『往生要集鈔』関係班 『往生要集鈔』『往生要集義記』諸本対照・訓読・現代語訳
関係者とのミーティングを闢き、秋学期からの現代語訳研究会開催に向けて準備中。
【第二部門】 中国関係班『瑞応伝』
善導伝が終了し、『安楽集』の出版に向けて準備中。本庄先生からの修正案について検討中。
【第二部門】 黒谷金戒光明寺『日鑑』研究班 黒谷金戒光明寺所蔵『日鑑』の調査・翻訳・研究
各自翻刻作業中。長期休暇に研究会を開催しまとめる方針。
【第三部門】 伝宗伝戒班 『真葛傳語』諸本蒐本および教理的根拠の探索
幡随意流の傳法書を読み、江戸期の浄土宗僧の感覚や文字に触れる訓練をしていく。
以上