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第二回研究会開催報告(法然仏教の多角的研究)

2018.5.25
日時:平成30年5月25日(金)14:30~16:00
会場:紫野キャンパス 15号館3F 第6会議室
参加者:14名

概 要
<研究発表>
発表者:加藤弘孝(嘱託研究員)
テーマ:「唐中期における善導観について―『念仏鏡』の「誓願証教門」を中心に―」

 発表者は『念仏鏡』(道鏡、善道撰)に対するこれまでの一連の研究において、ある仮説を立てるに至った。それは本書には誓願思想と関連した大行という浄土教家の代受苦思想が見えるのであるが、そこには浄土教家としての模範(鏡)としての善導に大行を重ね合わせようとする撰述者らの意図があったというものである。本発表ではこれらの観点を踏まえ、唐中期における浄土教家の善導観などを扱いながら、本書の撰述背景の考察をおこなった。
 『念仏鏡』では随所に善導と大行の事跡を併記している。これには模範的浄土教家である善導に大行を重ね合わせることで大行の顕彰を計る意図があったと推察し得るのである。ここから導き出される想定は、唐中期の浄土教家が、教線の拡張のために善導の後継を押し出していたというものである。
 決定的となるのが「誓願証教門」の編目である。ここでは仏格→菩薩→人師という次第で誓願思想が取り扱われるのであるが、興味深いことにこれらの誓願は代受苦、真実語思想とも関連付けられるのである。
ここでいう代受苦とは仏典に由来する思想であり、菩薩道の範疇として見做し得るものである。凡夫と阿弥陀仏との関係を基盤に置く浄土教においては仏菩薩側の主体的行為として信仰の対象となるものである。すなわち人師にこれを強調することは、仏格側の行為に引き寄せるものであって、仏格との同一視、崇拝化に繋がるのである。
 そして代受苦、真実語思想を用いた祖師化の現象は、唐中期の浄土教家の動向として一般化することができる。法照は、『五会法事讃』巻中において、善導が説く同行の念仏という観点で浄土教儀礼を位置付けているが、ここで代受苦が表明される。また少康においても真実語と誓願の組み合わせを善導信仰との脈絡で見出すことができる。唐中期においては善導の地位が飛躍的に上昇していくが、これらの思想動向と無関係ではないのである。
 興味深い事象としては、浄土教において唐中期以降、善導の直系の法脈が追えなくなり、それとは対照的に善導に直接、同行する意義が法照、少康らによって強調されていくようになる点が挙げられる。これは三階教の動向と類似していると思われる。三階教では創始者である信行が寂した後、その地位が飛躍的に高まり、信行に直接、同行するという宗教行為が重要視されるようになるのである。
 ではなぜ唐中期に至って浄土教に三階教との共通点が見出せるようになったのであろうか。長安において両者は大衆の支持を基盤とする競合関係の間柄であり、その支持を獲得するためには強力な宗教的象徴を必要とした。三階教にあっては信行がその存在であって、浄土教としてはこれに対抗し得る存在として善導をその寂後、前面に押し出す必要があったと想定し得るのである。


<各班進捗状況発表>

【第一部門  法然文献班 元亨版『和語燈録』本文・現代語訳対照本作成】 元亨版『和語燈録』の現代語訳出版に向けた資料整理を行なっていることを報告。

【第一部門  法然文献班 桑門秀我『選択本願念仏集講義』現代語訳】  出版に向けた具体的作業について、予算獲得を視野に作業中と報告。

【第一部門 『逆修説法』班 『逆修説法』諸本対照本作成、古本『漢語燈録』中心とする本文批判】 前回から一回の研究会を開催。次回は6/15予定。

【第二部門 『催邪論』班 明恵『摧邪輪』寛永版訓読・現代語訳】 『摧邪輪』巻中の現代語訳を再検討していることを報告。

【第二部門 門下班 門下研究目録作成】 それぞれ論文目録作成に向けて資料収集を行ない、特に幸西、長西を重点的に進めていることを報告。

【第二部門 中国関係班 道綽『安楽集』解読・現代語訳・文献批判】 前回から一回の研究会を開催。第六大門の輪読作業を報告。次回は5/29予定。

【第三部門 伝宗伝戒班 『真葛伝語』諸本蒐集および教理的根拠の探索】  前回から二回の研究会を開催。「五重九箇条」「宗脈五箇条」の推敲作業中と報告。
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