株式会社ジャクエツ 代表取締役社長 徳本 達郎さん
JR敦賀駅から車で約10分、敷地1万坪の自社製品工場を有し、企画開発から生産、アフターメンテナンスまでお客様のニーズに「ワンストップ」で対応するジャクエツ福井本社及び工場がある。大正5(1916)年9月の創業以来、1世紀にわたり保育施設から商業空間まで"可能性を広げるあそび"を創造する三代目の社長徳本達郎さんは、絵本のような製品カタログを手に「遊具も時代に合わせて変わってきています。例えば階段の段差をあえて大きくすることで、どうやって登るかを考える力や、周囲と助け合う精神が育まれます。社会性も養う機能が備わっていることなど、お客様に私たちがつくる環境で子どもたちの未来がかわるという『未来の価値』を理解していただくことが、これからの時代は大切になります」と自らに言い聞かせるように話した。
幼児教育のパイオニア的存在のジャクエツ
会社名の由来は若狭地方と越前を合わせた若越(ジャクエツ)から。幼児教育の重要性を訴えた若かりし頃の祖父達雄氏の熱意や先見性に、旧大和田銀行頭取で商工会議所会頭だった大和田荘七氏をはじめ、地元の有力者が賛同して早翠(さみどり)幼稚園が開園した。「当時は全国でも400程度しか幼稚園がない中で、敦賀の方々からのご支援により、敦賀で最初の幼稚園として早翠幼稚園は誕生し、そこで使う教材を自分たちでつくりだすことが弊社の創業になります」。開園から103年、今では幼児教育のパイオニア的存在である。
関山和夫先生の教えを経営に生かす
「本当に面白かったですね。ユースホステル部に入り、全国のユースホステル巡りや山登りも経験しました」と、学生時代を懐かしんだ。本業の勉強では関山和夫佛教大学名誉教授(享年83)の教えが、自身の経営哲学に大きく影響しているとのこと。歌舞伎や浄瑠璃、落語などの芸能の発展に絡む仏教の役割などの研究で名を馳せた関山先生から「芸能と仏教、祭りと仏教など、大衆・民間の中での仏教の在り方などを教えていただきました。特に『対極併せ持つ』考え方など、経営にも役立っています」と明かす。企業として利益を追求することで、初めて社員への還元(現世)、そして、子どもたちの未来をつくるという(来世)社会貢献も同時に追求する︱。「神仏習合の世界と同じで、両方とても大事です。人間は多層の心理が働くものですから」。
子どもたちの可能性を広げるために
徳本さんは「教育の世界もこれからは20年後、30年後の成果を見据え、明確にエビデンス(根拠・証拠)を示し提案する時代です。そのためには、学びにつながる『あそび』の経験がとても重要です。特に『やる気』『好奇心』『共感力』など非認知的能力の向上がその後の人生に大きく影響します」と話す。幼児期の子どもたちにとってはあらゆることが初体験となる。だからこそジャクエツは、質感、大きさ、形状にこだわり、運動能力・五感を発達させるべく「子どもたちの未来を創る価値」を提供し続けている。
徳本 達郎(とくもと たつろう) | 1963年、福井県敦賀市生まれ。実家は浄土真宗出雲路派御幸山良覚寺。佛教大学文学部仏教学科を卒業した86年に株式会社若越(現ジャクエツ)に入社。2004年専務取締役を経て06年より現職。祖父の徳本達雄氏が大正5年(1916年)の創立以来、ジャクエツは「幼稚園・保育園やこども園などの幼児教育環境の向上と子どもを取り巻く最適空間づくり」を目指している。2019年1月からロゴマークを英語表記JAKUETSに、「未来は、あそびの中に」の新スローガンとともに新たな時代を迎えている。 |
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