トレーニングジム経営で学生に自信と輝きを与えたい!
学部 | 教育学部 |
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学科 | 臨床心理学科 |
学年 | 4年生 |
氏名 | 百武 大翔さん |
在学中にビジネスコンテストに応募
京阪「藤森駅」から歩いて約5分。京都市伏見区深草の一角に、「学生専用」のトレーニングジムがある。バーベルやダンベル、ランニングマシンなどの器具が揃い、「今まで指導してきた学生は100人以上」という。そのジムの専属トレーナーであり、経営者・代表を務めるの百武大翔さん。本学の現役学生だ。
百武さんが起業を決意したのは大学3年生のとき。「佛大の社会連携センターから届いたメールを何気なく開いたんです」。そこには、一般社団法人京都知恵産業創造の森によるビジネスプラン募集の案内があった。「父が自営業をしていることもあり、いずれは自分も会社を立ち上げたいと思っていました。父のことはすごく尊敬していますから」。ダメで元々と、迷わず「2023年度ビジネス実践ラボ」に応募した。
プランが認められれば、順位に応じた資金が提供される。学生でも応募できるが、どんなプランでも通るわけではない。求められるのは確かなビジョンと熱意。応募者は、審査員である先輩経営者に自分の考えをプレゼンしなければならない。「自分は何ができるか、何がやりたいか」。百武さんの頭に浮かんだのが、トレーニングジムの経営だった。それは、自身のコンプレックスの克服と家族との絆を反映したビジネスでもあった。

弟と作り上げたトレーニングメソッド
厚い胸板、太い二の腕。Tシャツ越しに浮かび上がる百武さんの肉体は、まさに筋骨隆々。「ベンチプレスは、最高145キロです」。しかし、中学生の頃は華奢な体形だったという。「170センチそこそこの身長に、体重は50数キロ。サッカーをやっていたんですが、いつも当たり負けするような選手でした」。一念発起して筋トレを開始。器具を購入し、動画や書籍を参考に地道なトレーニングに励むと、みるみるうちに変わっていく自分がいた。「大きくなるためには食事も大事なので、母親の料理にも感謝しています」
成果が出たことで、次に取り組んだのが家族へのトレーニング指導だ。「ラグビーをしている2人の弟に教えたら、どんどん体が大きくなって、プレーにも良い影響が表れ始めたんです」。やがて弟たちは、京都の選抜チームやユース年代の日本代表に選ばれるまでの選手に。「自分の変化以上にうれしかったし、私が今あるのは弟たちのおかげ。すごく感謝しています」。独学ではあったが、百武さんは自らのトレーニングメソッドに自信を深めていった。
年代に応じたメニュー作成
提案したビジネスプランは、トレーニングジムの経営。さらに「学生専用」という冠を付けた。「弟たちを指導した経験もありますし、教員免許も4つ取得していたので、自分の強みだと考えました」。課題は、それを7分間のプレゼンでどう伝えるか。「資料作りやスピーチなど、準備にはかなり時間をかけました」。肝にしたのは実体験を語ること。細身だった頃と肉体改造後の写真を並べ、「自分自身が実績だと伝えました」。結果は合格。30万円の資金を獲得した。
合格後、百武さんは迷わず大学に1年間の休学届けを提出。「ジムのオープンに全力を注ぎたかった」。最も苦労したのは集客。「SNSでの告知やチラシ配りを徹底しました」。弟の試合会場に出向いて保護者に直接アピールすることも。そして、2024年1月のオープン時には、中高大生合わせて30人の会員を集めた。「うれしかったですが、最初から順調ではありませんでした」。競技やポジション、年齢によってトレーニングの目的や内容は異なる。一人ひとりに合ったメニュー作成には戸惑いもあったが、「好影響が表れ、学生や保護者から感謝されることに喜びを感じました」。指導面では、心理学科での学びが生きている。「継続してもらうためもあり、褒めて伸ばすことを大切にしています」。現在は、高校の部活への出張トレーニングや、バスケットボール大会のスポンサーなど活動の幅を広げている。「収益化もできていて順調です」と目を細めた。
起業には、自らの強みと思い切りが大切
事業開始から1年が経った2025年1月。百武さんは学内セミナーを企画・登壇した。「社会連携センターからの依頼で、学生による起業についてお話ししました」。メリットや注意点を伝える中で、最も強調したのは「自分の強みを生かすこと」。「他者にはないストロングポイントを事業につなげるのが成功への第一歩。私にとっては筋トレと教員免許でした。料理経験のない人が、いきなり飲食店を始めるのはリスクがあると思います」。ビジネスの規模は小さくてもいい。まずは地に足を付けて始めることが大切だと語る。「あとは思い切りも大事。コンテスト参加も休学も半ば勢いでしたが、結果的に本当によかった」
ジムの名「BRIGHT GYM」には、「誰もが輝ける場所にしたい」という思いを込めた。「かつての私のように、鍛えて成果が出れば自信になる。そんな人を増やしたいんです」。これからの活躍が楽しみだ。






(2025.7)