第2回 全体研究会(法然仏教の多角的研究) 開催報告
日 時:2025年5月30日(金)16:30~18:00
開催形式:オンライン(Zoom)
参加者 :14名
概要
<研究発表>
発表者:下端啓介(嘱託研究員)
テーマ:法然『無量寿経釈』の「古層」の検討 ―流通分「当来之等文」の段落に注目して―
法然が文治六年の頃に東大寺において「浄土三部経」の講説を行った際の講義録とされる『無量寿経釈』には、いわゆる「新層」と「古層」が存在するということが指摘されている。『無量寿経釈』にはいくつかの版本が現存し、浄土宗第八祖聖聡の『大経直談要註記』巻一に玄義分として収められている『無量寿経釈』も含め、その全てに広本『選択集』が機械的に付け加えられている。本発表では、『無量寿経釈』における流通分の一部に範囲を限定して、諸本の文言の異同を比較することで「古層」の解明に取り組んだ。その結果、『無量寿経釈』諸本においてこれまで議論されてこなかった『選択集』の挿入箇所(持戒・菩提心の説示)を指摘した。また、諸本間の異同から『大経直談要註記』所収の『無量寿経釈』の成立が先であり寛永版『無量寿経釈』の成立が後であることを論じ、両者の成立過程を示した。
<各班進捗状況発表>
【第一部門】 法然文献班 元亨版『和語燈録』本文・現代語訳対照本作成
個別に作業を進めている。
【第一部門】 逆修説法班 『逆修説法』諸本対照本作成、親鸞筆「法然聖人御説法事」を中心とする本文批判
前回全体会以後、研究会開催なし。次回は6月26日13:00~研究会開催予定。
【第一部門】 『選択集』諸本研究班 信重院蔵『選択集』諸本等の調査および研究
各自『選択集』諸本の比較表作成中。大谷大学図書館・龍谷大学図書館への調査準備中。
【第二部門】 『摧邪輪』班 明恵『摧邪輪』寛永版訓読・現代語訳・註
「巻中」訓・註・現代語訳の再検討。「巻下」訓・註・現代語訳。『紀要』掲載準備中。
【第二部門】 『徹選択集』研究班 『徹選択本願念仏集』の注釈類の翻刻・現代語訳
『紀要』掲載準備中。
【第二部門】『往生要集鈔』関係班 『往生要集鈔』『往生要集義記』諸本対照・訓読・現代語訳
『往生要集鈔』『往生要集義記』諸本対照は第一巻の七丁表まで完了。
【第二部門】 中国関係班『往生浄土伝』解読・現代語訳・文献批判
②釈僧恵、③釈道法まで終了。次回は6月4日14:30~研究会開催予定。
【第二部門】黒谷金戒光明寺『日鑑』研究班 黒谷金戒光明寺所蔵『日鑑』の調査・翻刻・研究
『日鑑(安永 5 年・6 年 5 月迄)』の翻刻チェック。
【第三部門】 伝宗伝戒班
聖聡『小経直談要註記』(京大本)の翻刻、現代語訳。研究会開催。
以上