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第二回研究会開催報告(法然仏教の多角的研究)

2019.5.20
日時:2019年5月20日(月)12:50~14:20
場所:紫野キャンパス 15号館3F 第6会議室
参加者:17名

概 要
<研究発表>
発表者:明石寛成(学術研究員)
テーマ:江戸時代における浄土教思想 -懐音『浄土考原録』を通して―

 江戸期仏教の重要性はしばしば指摘されるが、未開拓の分野が多い。江戸時代中期の浄土宗僧侶である懐音の生涯や著作、および思想についても同じことが言える。懐音は持戒念仏に励み、大蔵経校訂で有名な法然院中興第二世の忍澂に高く評価され、請われてその法統を継いだ。そのきっかけが、懐音『浄土考原録』の公刊である。大島泰信は『浄土宗史』において、「『浄土考原録』を見た忍澂がその人となりに惹かれ、懐音を後継者にしようと同学の義山に謀った」と指摘している。義山もまた傑出した浄土宗僧侶である。以上のことから『浄土考原録』の重要性が自ずと証明されるのである。
 しかし懐音の生涯についても、『浄土考原録』や『諸家念仏集』などの著作についても、先行研究がほとんどない。また同時期の、かれらを取り巻く寺院の動向についても研究が乏しい。そこで本発表ではこの著作から若干の章を取り上げ、その内容から当時の浄土宗および周囲の状況の一端を紹介した。
 はじめに懐音の伝記、及び『浄土考原録』の書誌について整理した。そこで辞典では明らかになっていない、生年、出生地、住職歴、『浄土考原録』の成立について考察を加えた。 生年は『法然院誌』に享年六十二歳とあることから生年を一六五三年と推察される。出生地は『玄阿伝略』に「和州」とあることから「大和」の生まれであると考えられ、住職歴は輪番での住職歴を踏まえると二十二年務めたことが分かる。そして『浄土考原録』には『天和本』と『寛政本』の二本があり、『天和本』は懐音が、急ぎ記したものであるため誤字脱字の引用の誤りがあることから『寛政本』が作られたことが分かった。
 そこで『浄土考原録』第一章「説法元旨」を取り上げ懐音の仏教観について考察した。 はじめに仏には多くの教えがあり、釈尊の出世については『法然上人行状絵図』からも見出せた。そして江戸期に限らず多くの論争があるが、その全ての教えが釈尊の教えであり、方便として様々な方法を説いただけで、全ての教えが解脱に通じることは『観経疏』『選択集』にも見られた。浄土の優劣については方便であり、区別はないが、懐音は多くの衆生の縁に随ったとする。懐音の立場は「教門非一」「教法元無二」で表現され、通仏教による浄土教の視点を持つのである。 その中でも白居易の引用は禅僧への非難を暗示していると考えられる。今後もこの点には注意して研究を進めていきたい。


<各班進捗状況発表>

【第一部門】法然文献班 元亨版『和語燈録』本文・現代語訳対照本作成 前回から一回の研究会を開催。善先生訳のチェックで「諸人伝説の詞」を検討中と報告。

【第一部門】法然文献班 桑門秀我『選択本願念仏集講義』現代語訳 前半部出版に向けて、1・2章の4回目チェック中であり、3〜6章は3回目のチェックが終わっている、と報告。なお、7章は『紀要』にて公開済み。

【第一部門】『逆修説法』班 『逆修説法』諸本対照本作成、古本『漢語燈録』を中心とする本文批判 前回から一回の研究会を開催。出版への見通しは現在のところ検討中と報告。

【第二部門】『摧邪輪』班 明恵『摧邪輪』寛永版訓読・現代語訳 随時「中巻」の検討を行なっていて、今年度中に「第4の過失」までおえられるよう進めていると報告。成果の出版については、8~9年後と予測。

【第二部門】 中国関係班 道綽『安楽集』解読・現代語訳・文献批判 前回から一回の研究会を開催。第二、弥陀釈迦二仏~是故頂礼平等力まで終了したと報告。

【第三部門】伝宗伝戒班『真葛伝語』諸本蒐集および教理的根拠の探索 個々で翻刻・現代語訳の検討訂正と、入稿用原稿整理作業を進めていると報告。5月末に入稿。 

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