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第六回研究会開催報告(法然仏教の多角的研究)

2018.12.17
日時: 2018年12月17日(月)12:50~14:20
会場: 紫野キャンパス 15号館3F 第6会議室
参加者:19名
 
概要
<研究発表>
発表者: 永田 真隆(嘱託研究員)
テーマ:「本朝における往生伝の構成について―『緇白往生伝』から『新明治往生伝』『第二新明治往生伝』まで―」
 
 本発表では主に『緇白往生伝』と『新明治往生伝』『第二新明治往生伝』を取り上げた。『緇白往生伝』は近世における浄土宗系の往生伝のなかでも最初期のものとして知られ、『新明治往生伝』と『第二新明治往生伝』は伝統的往生伝の形式をもった往生伝としては最後のものとなる。さて往生伝はもちろんまったくの創作というわけではない。しかしながら往生伝に所収される各人の伝は編者の編集意図によってその往生伝中の人々の生涯における事象のなかで強調される事柄が変わってくるのも事実である。本発表では『緇白往生伝』『新明治往生伝』『第二新明治往生伝』に関して往生者の平生の行業や性格、来迎描写の描かれ方などを比較考察し、往生伝の展開を確認するという作業を行い、近世初期よりの明治に至るまでの往生伝の成立過程を考察した。
 
 これにより『緇白往生伝』以降、近世においては種々の往生伝が、それぞれの意図をもって編纂され、特に平生の道徳的性質が語られることや臨終の正念を強調するなどの特徴をあげることができた。一方で明治期の往生伝群では奇瑞を説くことをせず、来迎描写で人々を浄土信仰へと誘引しようとするのではなく、事実を事実のままに記録しようという態度が見受けられた。法然は衆生が正念であるが故に阿弥陀仏の来迎があるという旧来の「正念来迎」ではなしに衆生を正念に至らしめるために阿弥陀仏の来迎があるという「来迎正念」を説いている。自力で正念を得ることができない我々凡夫を見据えて、阿弥陀仏の来迎があるからこそ正念になり得るのだと説いて、臨終に来迎を求めるのではなく平生の念仏こそ重視すべきであるというのである。このような法然の姿勢に立ち返ったものが明治期の往生伝であろう。ここには明治初期に西洋的思考が広まり非科学的な奇瑞が語りにくくなった状況、あるいは廃仏毀釈の影響が認められる。しかし実は往生伝の往生伝たる根幹はその独特な来迎描写、奇瑞であり、その消滅こそが、往生伝がその魅力をなくし明治期以降に編纂されなくなっていった一因ではないかと考える。
 
 現代における往生伝を編纂するとすれば、どのような態度で往生伝を蒐集すべきであるか、往生伝の流れを踏まえた上で今後の課題として考えねばならない。
<各班進捗状況発表>
 
【第一部門】法然文献班 元亨版『和語燈録』本文・現代語訳対象本作成
前回より3回の研究会を開催。善裕昭先生訳の検討を行なっていると報告。
 
【第一部門】法然文献班 桑門秀我『選択本願念仏集講義』現代語訳
出版に向けた作業を、本庄、上野の両先生で継続中と報告。
 
【第一部門】『逆修説法』班 『逆修説法』諸本対照本作成
前回からの研究会はなし。本日この後に研究会開催予定と報告。
 
【第二部門】『摧邪論』班 明恵『摧邪論』寛永版訓読・現代語訳
11月から、『摧邪輪』巻下を現代語訳作業中と報告。諸般の事情で、作業が1人で行われ
いることに関して、(複数で行なう事を前提で)とりあえず現状のままで継続すること、
研究内容は、現在の「下巻」の作業を中断して、「中巻」の現代語訳の再考を行なうことが
確認された。
 
【第二部門】『往生要集抄』関係班 『往生要集抄』『往生要集義記』諸本対照・訓読・現
代語訳
進捗は足踏み状態だが確実に継続中、と報告。
 
【第二部門】中国関係班 道綽『安楽集』解読・現代語訳・文献批判
前回から1回の研究会を開催。第七大門「第一此彼取相〜何以得知」を読了と報告。
 
【第三部門】伝宗伝戒班 『真葛伝語』諸本蒐集および教理的根拠の探索
現在、研究会を開催せず、『真葛伝語』の見直し訂正作業中であること、『真葛伝語』蔵者
の正定院住職と出版への承諾を求め、面会を模索中であること、伝書の出版のデリケート
な問題について、浄土宗学術大会での研究発表をセンター長が提案し、眞柄班長が承諾し、
学術目的の実績を積み上げて出版に繋げていくこととなったことを報告。
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