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第五回研究会開催報告(法然仏教の多角的研究)

2018.11.19
日時:2018年11月19日(月)14:30〜16:00
会場:紫野キャンパス15号館3F 第6会議室
参加者:17名


概要 <研究発表>
発表者:吉原寛樹(嘱託研究員)
テーマ:「鎌倉期における逆修法会の諸相について」

 死後の往生菩提に資するため、自らその生前にあらかじめ、善根功徳を修しておく事を目的としている。平安時代は社会的地位の高い宮中の人々が法会の施主となっているが、鎌倉、室町と時代が移り変わるにつれ武士層、名主層、更に庶民層に至るまで盛んに行なわれた。
  今回は鎌倉時代に修された逆修法会の事例を取り上げ法要の内容を明らかにいていく。 まず、浄土宗においては、法然が建久5年(1194)ごろ中原師秀に請ぜられ、逆修法会にて説法を行った。この逆修法会の聞書が『漢語灯録』(『逆修説法』)・『西方指南抄』(『法然聖人御説法時事』)・師秀説草などに所収されている。この法会では、法然の浄土教思想が色濃く反映されている。例を挙げると、以下の通り。

・初七日から六七日まで阿弥陀仏
・浄土三部経の功徳を讃嘆
・三尺の阿弥陀仏立像を造立
・道場の荘厳に48燈の灯明を用いる
・50日間の法会
・佛への供養
・僧への布施
・法会中、『往生浄土懺願儀』を併修
・『無量寿経』を書写
・浄土五祖を図絵する


 次に逆修法会が盛んになる前、平安初期の逆修法会の事例である、安倍貞行の逆修について取り上げる。856年に修された安倍貞行の逆修法会の事例は、菅原道真(845~903)の『菅家文草』巻十一に「爲前陸奥守安大夫〔安倍貞行〕、於華山寺講法華経願文」(『日本古典文学大系』72巻597頁)として所収されている。この法会では、以下のように修されていた。

・妙法蓮華経を書写
・僧による説法
・法華八講を営む
・逆修を営む


  次に1198年に修された貞慶の逆修願文(『鎌倉遺文』竹内理三編 第2巻302頁~304頁)について取り上げる。この法会では、以下のように修されていた。

・弥勒如来像、一千体阿弥陀如来像、一千体地蔵菩薩像、如意輪観世音菩薩像、普賢・文殊二大菩薩像、不動明王像、釈迦如来像を造る
・五輪石塔一基を造る
・妙法蓮華経第一巻から第八巻(但し第七巻は除く)、無量義経・観普賢経・阿弥陀経・般若心経、最勝王経を書写する(「自らの手で」とあるのは、初日のみ)
・初日より第七日まで勤め、各法会で対象者が異なる。


  次に1201年に修された成慶の逆修願文(『鎌倉遺文』竹内理三編 第3巻36頁~39頁)について取り上げる。この法会では、以下のように修されていた。

・各日において、釈迦如来像・薬師如来像・弥勒菩薩像・十一面観自在菩薩像・地蔵菩薩像・不動明王三尊像・阿弥陀三尊来迎像を図絵している
・各日において、妙法蓮華経一部八巻・無量義・観普賢・阿弥陀・般若心経各一巻、並びに梵網経下巻を摺写し供養している
・金剛般若経(第3日)
・華厳経普賢行願品第四十(第6日)を書写している
・「七分獲一」の文があり、「逆修七分全得」の思想がうかがえる
・初日より第七日まで勤め、各法会で対象者が異なる


  次に1215年に修された後鳥羽上皇の逆修願文(『鎌倉遺文』竹内理三編 第4巻159頁~162頁)、後鳥羽上皇逆修進物注文(『鎌倉遺文』竹内理三編 第4巻162頁~171頁)、後鳥羽上皇逆修僧名等目録(『鎌倉遺文』竹内理三編 第4巻171頁~180頁)について取り上げる。この法会では、以下のように修されていた。

・各日において三尺皆金色釈迦如来像・一尺五寸皆金色阿弥陀如来像・一尺五寸彩色地蔵菩薩・一尺五寸皆金色弥勒菩薩像・一尺五寸皆金色阿弥陀如来像・三尺皆金色薬師如来像を造立している
・各日において、色紙に妙法蓮華経一部八巻・無量義経一巻・観普賢経一巻・阿弥陀経一巻・般若心経一巻を模写している
・開白日に素紙に妙法蓮華経六部四十八巻・無量義経六巻・観普賢経六巻を模写している
・阿弥陀如来・弥勒菩薩等の像を各七鋪、図絵し、毎日一体ずつ開眼している
・逆修法会三七日の間、衆僧を請召し、尊経を転読し、多くの福を得たとする
・法会中、造佛・写経・散華・焼香の所作を行っている
・僧による説法
・道場荘厳に旗を用いる
・僧に対し布施を行う
・懺法を修す


  このように、鎌倉時代の僧や天皇が修した逆修法会を見ていくと、経の書写、佛の造立・図絵は共通している事が分かる。また、懺法を修す、施主による布施、七分全得の思想、功徳を向ける対象が日ごとに変わるなど各々の法会における特色も見ることができた。


<各班進捗状況報告>

【第一部門】法然文献班 元亨版『和語燈録』本文・現代語訳対象本作成
   前回より2回の研究会を開催。善先生の翻訳原稿をチェック中と報告。

【第一部門】法然文献班 桑門秀我『選択本願念仏集講義』現代語訳
  本庄と上野に分かれ、出版に向けた原稿作成に集中。印刷費用見積もりのため、原稿を提 出と報告

【第一部門】『逆修説法』班 『逆修説法』諸本対照本作成、
  古本『漢語燈録』を中心とする本文批判 前回から2回の研究会を開催。『写本集成』の230ページまで終了と報告。

【第二部門】『摧邪論』班 明恵『摧邪論』寛永版訓読・現代語訳
  紀要掲載予定原稿の作成中と報告。

【第二部門】中国関係班 道綽『安楽集』解説・現代誤訳・文献批判
   前回より2回の研究会を開催。第2大門の見直しと、第7大門を輪読と報告。

【第三部門】伝宗伝戒班 『眞葛伝語』諸本蒐集および教理的根拠の探索
   現在は、班員による輪読を中止し、それぞれ分担して、出版予定原稿を訂正中と報告。眞柄先生による解題を次回研究会で検討予定。
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