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第三回研究会開催報告(法然仏教の多角的研究)

2018.6.22
日時:2018年6月22日(金)14:30〜16:00
会場:紫野キャンパス 15号館3F 第6会議室
参加者:17名
 
概 要
<研究発表>
発表者:岩谷隆法(嘱託研究員)
テーマ:「法然門下における『無量寿経釈』の引用の整理-テキストについて-」

 東大寺講説「浄土三部経釈」は法然の浄土教思想を知る上で重要な文献であるが、現存諸本のテキストには『選択集』と部分的に一致する文章が指摘されており、成立当初の文章や内容を正確に知ることはできない。本発表では「三部経釈」にうち『大経釈』を取り挙げる。まず法然門下の文献における『大経釈』の引用を整理する。次に中世の諸師が現存諸本よりも原本に近い姿のものを見ていたと想定し、それら引用文と現存諸本とを対照・検討することによって中世の諸師が見ていた『大経釈』と現存テキストとの間柄について考察する。
 今回の引用整理では門下十三師の著作二十八本に計五十八箇所の引用が見られた。その多くは『選択集』等に見られない「但念仏・助念仏・但諸行」「頓漸二教判」「女人往生」等の『大経釈』独自の説示の引用であった。この点から門下諸師は『大経釈』の特色を明確に把握していたといえる。また諸師の引文と現存テキストとの異同を検討した結果、彼らはおおよそ寛永版系統に近いものを眺めていたであろうと推測する。そして諸師の引文のうち以下の特異な例を取り挙げて考察を加えた。
 
(1)  聖冏『決疑鈔直牒』にみる「第十八願文の呼称」に関する引文→廣本『選択集』と一致する箇所からの     引用であった。
(2)  良忠『決答授手印疑問鈔』の「正定業」に関する引文→現存テキストに全くの同文はないが廣本『選択     集』と一致する箇所からの取意文と推察した。
(3) 現存テキストには存在しない以下の三つの引文を取り挙げた。
 
①聖聡『法事讃私記見聞』の「三心」に関する引用→実際の典拠は『決疑鈔』と指摘した。②良心『選択決疑鈔見聞』の「来迎仏・化仏」に関する引用→同内容の説示を『観経釈』『逆修説法』等に求めた。③聖冏『二蔵義見聞』『浄土略名目図見聞』にみる「曇鸞の難易二道教」に関する引用→『大経釈』時点では聖浄二門判が未成立であり、法然が曇鸞の難易二道に着目していなかった可能性を論じ、よって聖冏における引用典拠の記述の誤り等であると推察した。
以上の考察により『大経釈』は聖冏の時代、早ければ良忠の頃には既に廣本『選択集』と校合されていた可能性があり、中世から現存テキストとあまり変わらないものを見ていたと予想する。結果として現存諸本のテキストは書誌的問題を有している一方で、法然門下において古くから重要な法然文献として受け継がれてきた姿を留めるものだといえる。


 
<各班進捗状況報告>
 
【第一部門 法然文献班 元亨版『和語燈録』本文・現代語訳対照本作成】
翻訳担当者からの原稿を待っている状態で、研究会を開催せず。藤堂原稿が返ってきた
ことが報告され、今後、それを検討すると報告。
 
【第一部門】法然文献班 桑門秀我『選択本願念仏集講義』現代語訳】
来年の予算計上に間に合うよう、原稿を準備中と報告。
 
【第一部門】『逆修説法』班 『逆修説法』諸本対照本作成、古本『漢語燈録』中心とする
本文批判】
前回から一回の研究会を開催。三七日終わりまで終了したことを報告。
 
【第二部門】『催邪論』班 明恵『摧邪輪』寛永版訓読・現代語訳】
『摧邪輪』巻中現代語訳の再検討中。55丁表まで、表記・注記を再考していることを報告。
      
【第二部門】『往生要集抄』関係班 『往生要集抄』『往生要集義記』諸本対照・訓読・現代語訳】
本庄ファイルとの照らし合わせ作業を行なっていることを報告。
 
【第二部門】中国関係班 道綽『安楽集』解読・現代語訳・文献批判】
前回から二回の研究会を開催。第2大門の見直し作業中であることを報告。
 
【第三部門】伝宗伝戒班 『真葛伝語』諸本蒐集および教理的根拠の探索】
前回から一回の研究会を開催。出版に向けて「宗脈五箇条」部分の推敲作業を進めている
と報告。
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