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第5回研究会開催報告(法然仏教の多角的研究)

2016.11.25
日時:2016年11月25日(金曜)13:00~14:30
会場:紫野キャンパス 鹿渓館1階 第1会議室
参加者:17名
        
概 要
<研究発表>
発表者:市川 定敬  研究員
テーマ:『一百四十五箇条問答』と円頓戒について
 
『一百四十五箇条問答』は『和語灯録』に収録される問答であり、その質問内容が教義に関するものよりも日常生活における具体的な行為に関するものが多いという点を特徴とするものである。しかしながら、『和語灯録日講私記』が「此百四十五箇條の内尋の詞難心得品々數條あり」としているように、質問の意図あるいは背景が不明なものが複数ある。本発表は、この質問の問題の背景の一つとして『梵網経』に説かれる十重四十八軽戒が考えられるということを指摘するものである。
 例えば第五十三番目の問いは「還俗の者に目を見合わせずと申しそうろうはまことにそうろうか」という質問である。『梵網経』の第四十三軽戒は「信心をもて出家して仏の正戒を受け、故らに心を起して聖戒を毀犯せば」と戒を毀犯することを戒めるものであるが、こうした者に対しては「一切衆生、眼に見ることを欲せざらん」ことが説かれている。質問者が問題としているのはこの『梵網経』の文言解釈であると考えられる。また、第一〇八番目の問いは「経仏なんど売りそうろうは罪にてそうろうか」というものであるが、これは『梵網経』の第三十一軽戒の「仏の滅度の後」に「仏菩薩なる父母の形像」「経律」「比丘・比丘尼」「発心の菩薩道人」が売られているのを見たならば、それを買い取って救わなければならないという戒に関わる問答であると考えられる。
 このように、『一百四十五箇条問答』を円頓戒との関連性から見ていくならば、およそ二割の問答が戒に関する問答であると見ることができる。『四十八巻伝』第二十四巻には「元久二年正月二十一日、尋常なる尼女房達、数多上人の御坊へ参りて、「戒をも受け奉り、念仏往生の様をも承らむ」と申しければ、上人まず戒を授けられ、その後、浄土の法門を述べ給うに・・・」という記述があり、法然が一定の身分の女性たちに対して戒を授け、かつ浄土の教えを説いていることを伝えているが、『一百四十五箇条問答』とはまさしくこうした折になされた問答であるといえるだろう。また当時の習慣として、受戒した者にとっては授戒の儀式が単なる形式的なものではなく、それぞれの行動を規定していく要素となっていたということがこの問答から推測される。あるいは、梵網戒に関わる問答と、関わりがないながらも罪の有無を問う問答とが混在しているところから、当時の人々のいわゆるタブーを構成する要素の一つに円頓戒が含まれていたということが考えられるのである。
 
<各班進捗状況報告>
【第一部門 法然文献班 元亨版『和語燈録』本文・現代語訳対照本作成】
発表者:角野玄樹嘱託研究員
前回から2回の研究会を開催。「一百四十五箇条問答」の「その7」「その9」 途中までを検討と報告。
 
【第一部門 法然文献班 桑門秀我『選択本願念仏集講義』現代語訳】
発表者:本庄良文研究員
第3章と第14章、第15章の見直しとチェック作業について報告。
 
【第一部門 『逆修説法』班 『逆修説法』諸本対照本作成、古本『漢語燈録』中心とする本文批判】
発表者:齋藤蒙光嘱託研究員
現代語訳作業が終了にともない、見直しのルールを策定。作業を開始していることを報告。
 
【第二部門 『摧邪輪』班 明恵『摧邪輪』寛永版訓読・現代語訳】
発表者:米澤実江子嘱託研究員
11月中は凡例と「第4の批判」「第5の批判」の見直し作業に従事、と報告。
 
【第二部門 門下班 門下研究目録作成】
発表者:伊藤茂樹嘱託研究員
データ入力作業について、凡例策定とチェック作業を報告。
 
【第二部門 『往生要集鈔』関係班 『往生要集鈔』『往生要集義記』諸本対照・訓読・現代語訳】
発表者:南宏信嘱託研究員
『往生要集義記』引用の系統を特定する作業を学会で発表したと報告。
 
【第二部門 中国関係班 道綽『安楽集』解読・現代語訳・文献批判】
発表者:加藤弘孝嘱託研究員
前回から2回の研究会を開催。「第4大門」を検討、と報告。
 
【第三部門 伝宗伝戒班 『真葛伝語』諸本蒐集および教理的根拠の探索】
発表者:真柄和人嘱託研究員
前回から2回の研究会を開催。「已証傍人伝」の中、「直正」と「直面」の内容について、確認と再検討を行なったと報告。
 
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