独サッカーチーム「バサラマインツ」メディカルスタッフ 清水 遼さん
語学力ゼロでドイツに渡り、サッカーチームのトレーナーに
小学生からサッカーに打ち込む
「大きなサッカースタジアムで、メディカルトレーナーとして働きたい」
高校の時に抱いた夢が、ドイツでかなった。相手チームは1部リーグの強豪ドルトムント。観客3万人の視線が集まるグラウンドに立ち、清水遼さんは思った。「この景色が見たかったんだ」
小学生の頃からサッカーに打ち込んだ。高校生の時、先生に「将来どうするんや」と聞かれ、けがをして何度も世話になった理学療法士の姿が浮かんだ。「将来サッカーチームで働くために、理学療法士を目指す」。そう決めた。
佛教大学に進学したのは、1クラスの人数が少なく、偏差値も高いためだ。質の高い授業を、熱心に勉強してきた仲間と受けられると考えた。
「入学すると期待以上で、勉強をするのにすごくいい環境でした。先生との距離がとても近く、先生の部屋で何でも相談させてもらったのはすごく良かったですね」。授業では専門的な知識だけでなく、人として相手にどのように関わるか、という根本的な考え方も学んだ。
佛教大学の理学療法学科らしさを感じたのが、ゼミの歓迎会だ。「1期生から、自分たち11期生までが全体で集まりました。驚きましたね。先生と先輩、後輩の距離が近いんです」。理学療法士として活躍する先輩たちから、就職のアドバイスなどさまざまな話が聞けた。
サッカーとの関わり方は、3年生の時に選手からトレーナーへと方向転換した。実習や授業が忙しくなってきたこともあり、将来の仕事を見据えて経験値を積もうと考えたのだ。
ドイツで大きく成長
卒業後、理学療法士として病院で勤務したものの、約1年4カ月後の2021年夏に単身ドイツに渡る。清水さんに何があったのか。
「新型コロナが始まり、自分と向き合う時間ができました。病院で働くことも好きだったのですが、海外のスポーツ現場で自分を高めたいという思いが強くなりました」
そんな時、ドイツのサッカーチーム「FCバサラマインツ」と出会い、「うちで経験を積まないか」と誘われた。元日本代表の岡崎慎司選手と、ドイツでのプレー経験がある山下喬さん(現監督)の2人が2014年、「世界で通用する日本人選手を育てたい」と設立したチームだ。11部からスタートし、6部まで駆け上がってきている。
「選手たちは日々、人生をかけて戦っています。そして、山下監督は何事にも本気で正直に取り組む方。このチームで僕も成長してやろうと思いました」
チームは、日本人よりもドイツ人が多い。ドイツ語の語学力ゼロからスタートし、1年後には、ドイツで理学療法士として働くのに必要な語学試験に合格するに至った。「ドイツと日本では理学療法士の教育システムに違いがあるため、免許の書き換えに苦労しています」。現在はドイツの理学療法士の学校に通い、その後にサッカーチームで働く。忙しい毎日だ。
2023年夏、大きなスタジアムでトレーナーを務める夢がかなった。「この景色が見たいと思って突き進んできました。でも今は、選手がケガなくプレーできることの方がうれしく感じます」
後輩には、次のメッセージを伝えたい。「自分の気持ちにうそをつかず、挑戦することが大事です」。まさに清水さんが歩んできた道である。
清水 遼(しみず りょう) | 1997年山口県生まれ。2020年に佛教大学保健医療技術学部理学療法学科を卒業後、京都武田病院で理学療法士として勤務。訪問看護ステーションやスポーツ専門クリニックでも経験を積んだ。2021年8月にドイツに渡り、サッカーチーム「FCバサラマインツ」で研修を受けるかたわら、語学学校に通った。2022年からバサラマインツとTSVショットマインツに勤務し、メディカルスタッフを務める。ドイツでは「日本食のありがたさ」を知った。 |
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(2024.1)