日中共同ニヤ遺跡学術調査

1988年、キジル千仏洞修復協力を縁として開始され、早くも20余年、国宝級遺物多数発掘や遺跡全容を明らかにするなど大きな成果をあげた、「日中共同ニヤ遺跡学術調査」(佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構・新疆ウイグル自治区文物局・新疆文物考古研究所主催、中国国家文物局批准、文部科学省助成)その成果は三巻の報告書と国際シンポジウムなどで公開。日中間の最大規模の文化財保護研究事業として現在も継続中、その概要を紹介したい。

遺跡位置
  • 新疆ウイグル自治区民豊からタクラマカン沙漠へ約100km北上
  • 北緯37゜58'、東経82゜43' 一帯
遺跡概要
  • 紀元前1C~5C
  • 西域36国"精絶国"
  • 世界最大規模の仏教都市国家遺跡
  • 東西約7km、南北25km(周辺含む)
  • 「シルクロードのポンペイ」「幻の古代遺跡」
  • 仏塔、寺院、墓地、住居、生産工房、貯水池、家畜小屋、畑、並木など 約250ヵ所

遺構

国宝中の国宝となった「五星出東方利中国」錦


調査簡史
  • スタイン隊(1901・06・13・31年):遺跡発見。大量の文物を発掘し研究、概要を明らかに
  • 大谷隊(1909年):到達できず、詳細不明
  • 新疆博物館隊(1959年):墓地を発掘、「万世如意」錦など収集
  • 日中共同ニヤ遺跡学術調査隊(1988年~):初の本格調査、全容を明らかに
調査経過
1988年
調印、悪戦苦闘ラクダで3日、遺跡中心の仏塔に辿り着く、遺跡概要把握

90年~91年
予備調査継続、世界でも例を見ない大沙漠での調査方法検討

92年
中国国家文物局(文化庁に相当)批准、文部省助成開始(99年まで)

93年
中国全人代(国会に相当)が取材班派遣(新華社・中央テレビ・中国石油報)

94年
国家文物局発掘許可(中国全土で外国隊第1号)、ニヤ遺跡学術研究機構を設立

95年
王族の墓地発掘、「王候合昏千秋万歳宜子孫」「五星出東方利中国」錦など多数検出、国宝に指定され、「1995年中国十大考古新発見」に選ばれる

96年
南部に謎の城壁発見、北方に約3000年前の遺構・遺物発見、『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』第一巻(日中両文)出版、「全国重点文物保護単位」に昇格

97年
佛教大学で新図書館落成記念「日中共同ニヤ遺跡学術研究国際シンポジウム」と「日中共同ニヤ遺跡学術研究出土文物展」を開催、第9次現地調査、遺跡全体の保護開始

98年
上海博物館で「シルクロード考古珍品展」開催、検出文物出陳、約50万人参観

99年
『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』第二巻(日中両文)出版、各方面より高い評価をえる

2000年
新疆博物館で「新疆考古成就展」開催、検出文物出陳、ウルムチでシンポジウム開催

01年
「20世紀中国考古大発見100」に選ばれる

02年
『シルクロード・ニヤ遺跡の謎』出版。「シルクロード・絹と黄金の道展」(東京国立博物館・大阪歴史博物館)に検出文物出陳

04年
中国側が仏塔修復開始、日本側遺跡変化状況確認のため10回目の現地入り

05年
『シルクロード・ニヤ遺跡の謎』の中国語版出版

07年
佛教大学で「日中共同シルクロード学術研究国際シンポジウム」を開催、『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』第三巻出版

09年
北京大学で「漢唐西域考古-ニヤ・ダンダンウイリク国際シンポジウム」を開催

11年
清華大学と「ガンダーラからニヤ写真展」を開催

12年
大英図書館での国際シンポジウムで世界的文化遺産の保護研究の重要性を発表

13年
『新疆での世界的文化遺産保護研究事業と国際協力の意義』刊行、佛教大学でシンポジウムと写真展を開催

14年
北京大学でのカローシュティーシンポジウム発表者らとニヤ遺跡変化状況確認のため11回目の現地入り

調査組織
日本側

日本側:真田康道・井上正・小島康誉・孫躍新・小野田豪介(佛教大)、井ノ口泰淳・蓮池利隆・市川良文・稲益晃一(龍谷大)、田辺昭三(京都造形芸術大)、高橋照彦(国立歴史民俗博物館)、高妻洋成・杉本和樹(奈良国立文化財研究所)、古川雅英(科学技術庁)、長澤和俊(早稲田大)、伊東隆夫・大山幹成(京都大)、吉田恵二・加藤里美(国学院大)、米田文孝(関西大)、貝柄徹(関西外国語大)、吉崎伸(京都市埋蔵文化財研究所)、田中清美(大阪市文化財協会)、中島皆夫(長岡京市埋蔵文化財センター)、米川仁一(橿原考古学研究所)、坂本和子(古代オリエント博物館)、浅岡俊夫(六甲山麓遺跡調査会)、切畑健(大手前大)、石田志朗(山口大)ほかの研究者と撮影・測量技師

中国側

中国側:劉宇生(新疆政府)、韓翔・岳峰・王経奎(新疆文化庁)、盛春寿・李軍(新疆文物局)、王炳華・伊弟利斯・于志勇・張玉忠・李肖・劉玉生・張鉄男・佟文康(新疆文物考古研究所)、沙比提・伊斯拉斐爾(新疆博物館)、熱傑布・買提哈斯木(和田文物管理所)、柳洪亮(吐魯番地区文物局)、李季・楊林・王軍(国家文物局)、王邦維・斉東方(北京大学)、劉樹人・陳芸(華東師範大学)、楊逸畴・王守春(中国科学院)、任式楠・孟凡人(中国社会科学院)、景愛・楊晶(中国文物研究所)などの研究者と撮影・測量技師

成果
  • 仏塔・寺院・墓地・住居・生産工房・土塁・家畜小屋・果樹園・貯水池・並木など約250箇所の遺構を発見し、GPSで経緯度を登録し、遺構分布図を作成した。
  • 大型GPSを活用し、周辺地形図を作成、遺跡全容を明らかにした。
  • 遺跡北方約40kmに更に古い遺構・遺物を発見し、生活拠点の南下を明らかにした。
  • いくつかの住居を発掘し、生活状況を明らかにした。
  • いくつかの住居群や生産工房を測量調査し、都市構造を明らかにした。
  • 寺院を発掘調査し、壁画などを検出し、西域仏教解明の手がかりを得た。
  • 王族の墓地を発見発掘し、国宝級遺物を多数検出。精絶国が当時の中原王朝と政治経済文化面で密接な関係であったことを明らかにした。
  • 各種の墓地を発掘し、埋葬方法に新たな知見を得た。
  • 住居の柱材などをC14法により測定し、遺跡年代確定の大きな手がかりを得た。
  • カローシュティーおよび漢文木簡を含む大量の貴重文物を検出、新しい知見を得た。
  • カローシュティーおよび漢文文書を解読し、新しい知見を得た。
  • 動物の化石を検出し、遺跡一帯の地質形成で新しい知見を得た。
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