第10回佛教大学小学生俳句大賞は、1年生から6年生まで日本全国の小学生のみなさんからご応募いただきました。
低学年の部14,071句、高学年の部25,620句、合計39,691句もの応募があり、団体応募は324校の小学校からご応募いただきました。
たくさんのご応募、本当にありがとうございました。
厳正な審査により選ばれた作品を発表いたします。
青砥 弘幸 | (佛教大学教育学部講師) |
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尾池 和夫 | (京都造形芸術大学学長・俳人協会評議員) |
田中 典彦 | (佛教大学長) |
坪内 稔典 | (佛教大学名誉教授) |
原田 敬一 | (佛教大学歴史学部教授) |
山本 純子 | (第55回H氏賞受賞の詩人) |
日時 | 2017年3月26日(日曜) 14:00〜 佛教大学紫野キャンパスで開催 ※入賞者(佳作を除く)を表彰式にご招待いたします。 |
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最優秀賞 | 図書カード3万円 (低学年部門1名・高学年部門1名) |
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優秀賞 | 図書カード1万円 (低学年部門4名・高学年部門4名) |
選考委員 特別賞 |
図書カード5千円 (低学年部門6名・高学年部門6名) |
入選 | 図書カード3千円 (低学年部門10名・高学年部門10名) |
佳作 | 記念品 (低学年部門100句程度・ 高学年部門100句程度) |
学校優秀賞 | 希望に応じ選考委員による派遣授業 (3校程度) ※学校と相談させていただきます。 |
小学生俳句大賞がついに10回に至りました。第1回目は1万3千句あまりでしたが、今回は約4万句、すごい数字になりました。応募は日本全国から、そして海外からもありました。熱心な応募者もいて、何回か入賞した、という人も何人か現れています。
低学年の部の最優秀賞に選ばれたこの句は、みかんの皮が「たこの足」だという表現が新鮮、しかもおかしいです。母はたこの足のように皮をむくのが特技というか得意なのでしょう。子どもは母に向かって、「ねえねえ、たこの足にむいて」と言います。母はにこにこして、まるで手品のように八枚の皮をぴらぴらさせるのです。「ほら、たこみかん!」と。そのむいたみかんをみせびらかす母の顔が見えます。いいなあ、その感じ。親と子の心が「たこの足」でつながっている。
上は低学年の部の優秀作品ですが、網戸に来てひっかかっている虫を「虫の図かん」と表現したのがとても新鮮でした。それは思いがけない表現です。網戸がなんともすてきな場所になった感じです。
言葉の世界では、現実とは違うことが起こります。みかんの皮がたこの足になったり、網戸が虫図鑑になったりするのです。
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ
水中の河馬(かば)が燃えます牡丹(ぼたん)雪
これらは私の俳句ですが、甘納豆が笑ったり、ぽぽのあたりが火事になったりするのは、やはり言葉の世界での出来事、言葉の世界だからそういうことが起こるのです。現実の甘納豆が笑ったら、ホラーというか怪奇現象になってしまいます。水の中のでっかいカバも、まっ白いぼたん雪がふわふわと舞う中ではまっ赤に燃えるのです。言葉の世界のカバのそれはちょっと不思議な出来事です。
次は高学年の部の最優秀賞作品ですが、窓を自由帳と表現した、その表現がやはり新鮮です。
露がいっぱいついて曇った窓、その窓のガラスに絵をかいたり、何か言葉を書きつけたりしているのです。窓がなんでも書ける自由帳に変わっています。
以上、第10回佛教大学小学生俳句大賞のすぐれた作品のすぐれている点に簡単に触れました。五七五という短い表現を通して、小学生が言葉の魅力や楽しさを体験する、そんな機会としてこの賞が機能していることをうれしく思います。
坪内稔典(選考委員代表・佛教大学名誉教授)