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洛中楽話 2008年度

赤松 智子先生
手織りも園芸も 研究人生の糧に

佛教大学保健医療技術学部 作業療法学科教授

赤松 智子 先生

2009年冬期(1,2,3月)掲載

医療の新分野、作業療法に取り組む赤松先生の研究室は、カラフルな自作の手織りのタペストリーや人形などがいっぱい。「さまざまなモノを作る作業工程に、認知リハビリテーションの効果があるんです」と話す先生のこだわりは、趣味もライフスタイルもすべて研究につながっている。「身体や心に障がいのある人をサポートして、一緒に生きていきたい」と熱っぽく話す先生のモノづくりへのこだわりをうかがった。

研究室のドアを開けると、テーブルの上に手織りのインテリアグッズや人形、おしゃれな壁掛けなどが目に飛び込んできた。一瞬、デザイナールームと見間違ってしまいそうだ。「リハビリテーションっていうと歩行訓練など運動機能回復が一般的ですが、クリエイティブなモノづくりの工程、その手続きの過程に効果があるんです。自転車に乗ることができ、ピアノを弾くといった手続きの過程を担っているのは、大脳基底核や小脳で、手続き記憶と呼ばれています。軽度の脳梗塞や認知症で大脳の機能が失われても、残存する大脳基底核や小脳が代わりに働いてくれる。手続き記憶を利用したリハビリテーションが期待できます」。

京都市右京区嵯峨で育った。「嵯峨幼稚園、嵯峨小学校、嵯峨中学校、北嵯峨高校…とみんな嵯峨です」と笑う。小さいころから小学校の先生志望だったが、浪人覚悟の大学受験で「作業療法士」という耳慣れぬ学問に出会い、その春に京都大学医療技術短期大学部に新設された新学科に合格。卒業後は、セラピストとして病院や保健所、介護老人保健施設の現場での作業療法に関わりながら、大学研究室とのかけ持ち人生が続いている。3年前、作業療法学科が誕生した佛教大に招かれ、作業療法士の育成にも取り組んでいる。

「時代のニーズに合った新しい職場ですが、対象者の方との対話は不可欠ですから、生きてこられた近代史も知らないと話し相手になれませんし、幅広い人間性も要求されます。高齢の方ばかりではありません。難病やうつ、発達に遅れのある子どもさんなど対象者はさまざまです。それに認知症にならないためのライフプランづくりも作業療法の大きな役割です」。丹波路のドライブで山にツルを採り、伊豆の海辺で貝を拾う。国内外の学会出張では、前後に旅のスケジュールを入れて楽しむ。「モノづくりの素材探しですね。これは何かに使える、あれも教材になるって」(笑)。趣味の料理もガーデニングも、すべて作業活動の延長だ。

手織りのタペストリーや人形

「元気に生きてきたのに、認知症で人間としての存在さえ失われる。でも、手続き記憶を利用した活動を通して失われた機能を引き出し、その人らしく生きていけるお手伝いができればと思っています」。

24時間セラピスト人生はしかし、気負いが無く、笑顔が優しい。

Profile

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佛教大学保健医療技術学部 作業療法学科教授
赤松 智子(あかまつ・ともこ)

京都市出身。
京都大学医療技術短期大学部作業療法学科卒業。
国立療養所宇多野病院(当時)にて作業療法士としてリハビリテーションに従事し、母校に戻り後輩指導、地域保健・福祉活動に関わる。
2006年度より佛教大学教員。専門は神経筋疾患のリハビリテーション、認知神経科学。