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洛中楽話 2008年度

大束 貢生先生
私のこだわり

佛教大学社会学部 現代社会学科准教授

大束 貢生 先生

2008年春期(4,5,6月)掲載

「男らしさって何だろう?」という素朴な疑問を自分に問い続けてきた「スポーツ音痴でいじめられっ子だった」という大束貢生先生。ウーマンリブならぬ「メンズリブ」運動のリーダーとして市民活動にかかわり、大学でもジェンダーやセクシュアリティを研究テーマにしちゃった先生のこだわりは何と、最も男らしい?スポーツ「ラグビー」―。
「男であること」への葛藤の半生を引きずりながら到達した自身の究極の「こだわり」に迫ります。

「私たちは男と女の違いを当たり前だと思っていますが、カタツムリは雌雄同体。若いときに雄で成長すると雌になる魚もいる。男女の区別にこだわり続けるのは人間だけですよ。もっと、いろんな性のありようがあっていい」―。のっけからジェンダー論が飛び込んできた。「男性に男らしさ、女性に女らしさを強制する社会はおかしい。女性が家事・育児を求められるのとは逆に、男性は働いて家族を養うことが求められている。男の生き方にも、いろんな生き方があっていい」。

子どものころ全くスポーツに関心がなく、女の子と遊ぶ手芸や料理が好きだった。世間からは「変わった男の子」だと思われたが、自分はそうは思わなかったという。息子とキャッチボールをするのが夢だった父は、強制的に野球をさせようとした。鉄棒の逆上がりも投げることも走ることも苦手な究極の運動音痴は、クラスの格好のいじめの対象だった。「父には『男のくせに』と怒鳴られ、担任の先生にも『大束君はもっと運動をしてたくましくなって』といわれた。『女の幸せ』はあっても『男の幸せ』という言葉はない。男は残業して当たり前で弱音を吐きづらい社会が過労死を生んでいる」。

「男の子で体育ができないだけで、どうして駄目な奴なのか」―。自問自答しながら中学生になって「男」を意識するようになり、「男らしくなれない自分」と対峙することになる。そして子どものころからの体験が自然に市民運動に駆り立て、学問・研究の世界にも継続されていく。男性の立場から男のあり方を見直し男女共同参画社会の実現をめざすメンズリブ(男性運動)へと社会活動を展開。現在、大阪にある「メンズセンター」の運営委員長を務めながら「男のフェスティバル」などのイベントを開催。生物的性差ではなく社会的、文化的につくりだされてきた男女の違い「ジェンダー」を問い直す運動の先頭に立っている。

メンズリブ10年―。世の中少しは変わりましたか。「最近、ファーストフーズの支店長が管理職訴訟を起こしたり、コーヒーのCMに『男の小さな幸せ』が語られたりしている。鏡を見る男性も増えてきた。『男は仕事』一辺倒ではない、いろいろな男の生き方が認められつつあるのではないでしょうか」。

大束先生

その大束先生がこだわっているのが「最も男らしい」といわれるラグビー。佛教大大学院時代を経て今も関西大学同好会リーグに所属する佛大チームの顧問兼現役プレーヤーだ。寒風吹きすさぶグラウンドで、若い学生と体をぶつけ合いボールを追っかける。「もう走れなくて最近はワンポイントリリーフですね。相手を倒す激しいタックルに磨きをかけています」とこぼれる笑顔は、どこから見ても心優しいラガーメンだ。

「男であることからは抜け出せない自分が、どこか心の奥底に居続けてきたのかも知れませんね。自分が思い続けた『男らしさ』がラグビーだったのかも」。

そして、「男らしさ」よりも「自分らしさ」を追っかける大束先生の挑戦は続く。

Profile

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佛教大学社会学部 現代社会学科准教授
大束 貢生(おおつか たかお)

大阪府寝屋川市出身。
佛教大学大学院博士課程 社会学・社会福祉学研究科社会学専攻
単位取得満期退学。

日本の男性運動(メンズムーブメント)にかかわり、 大阪に設立された「メンズセンター」運営委員長を務める。
専門はジェンダー論。日本社会学会、日本ジェンダー学会所属。
著書に『男の子の性の本』(解放出版社)など。

2008年9月6・7日に大阪府豊中市すてっぷにて 第11回男のフェスティバル開催予定。