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公開講座のご案内(2018前期)

仏教を極める

立ち現れる聖性

仏教美術と基層信仰

シューベルトやシューマンが愛し、その詩に美しい調べを付した19世紀ドイツの詩人・ハインリヒ・ハイネ【Christian Johann Heinrich Heine,1797年-1856年】に『流刑の神々』【Les Dieuxen Exil,1853】という著作があります。彼は、この著作の中で、唯一神を奉じるキリスト教によって、世界の辺境や隅に追いやられたギリシャ・ローマの神々が、各地の伝承の内に力強く生きている姿を深い愛の内に描きました。ユダヤ人として生を受けた彼の意図は、世界のメインシステムが変わっても生き続ける心の奥底に潜む抑制されることなき“何か”。それは人が生きていくために絶対に欠かすことができない大切な“核”であり、人類史のあらゆる時空に装いを変えながら何度でも現れてきます。今年度の講座は、ハイネが賛美した人の奥底に潜む“核”(彼はそれを神々と呼んだ)と仏教美術を巡る12の物語。仄かな光を孕む薄暗闇の領域から、仏教美術のフィールドに立ち現れてくる原初のイマージュを皆さんと一緒に捉え、感じ、考えていきたいと思っています。

神戸市立博物館学芸員 川野 憲一

講座概要

受講料
1回 1,000円
定員
各回 150名(当日先着順)
開講予定
全12回 毎回月曜日 13:00~14:30

講師の緊急な都合などにより、日程、講義内容等を変更する場合があります。

講座詳細

テーマ 飛鳥美術にみる“氣”の造形
講師 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)
内容 細長い尊顔に拝されたアーモンドの実のような大きな眼。口端をわずかにあげることによって浮かぶ神秘の笑み。痩身を包む大きな衣が造りだす幾何学的なリズム。宝冠や髪、衣端などに配された渦や不可思議な形象。飛鳥時代に制作された仏は、自然主義的な造形を厳しく排除しているかのようです。この造形の核となっているのは中国オリジンの“氣”。中国大陸に住まう人々の心の奥底に潜む重要な“核”です。神秘に満ちた飛鳥時代の仏教美術を今一度しっかりと“観”ることから始めましょう。
開講日時 2018年4月9日(月曜)  13:00~14:30
テーマ 蓮の真相―白鳳美術に潜む神秘の形象
講師 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)
内容 美しい水からするすると立ち昇ってくる不可思議な形象。蓮の花びらの上に軽やかに坐す美しい肢体を持った聖者たち。みずみずしい生命力に満ちた肉体を持つ白鳳の仏達は聖なる華・蓮が良く似合います。インドで誕生した神秘的な“いのちのかたち”の本邦への伝来と開花をお楽しみください。
開講日時 2018年5月7日(月曜)  13:00~14:30
テーマ 法華堂根本曼荼羅と聖山―召喚された聖地
講師 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)
内容 画面の大半を占める空間に山が描かれています。よくみると、不思議なかたちをした雲がゆらゆらと立ち昇り、人の手のような枝を持った樹木もみられます。山中には水をたたえた空間もあるようです。山の前では調和美を体現したような釈迦が菩薩や弟子たちを前に説法をしています。伝わったのは東大寺法華堂。現在、ボストン美術館の至宝として知られるこの絵画は、奈良時代の古典美を代表する作品として評価されています。しかし、この絵画にはそれだけにとどまらならい不思議な凄みが宿っています。日本的な変容をとげた聖なる山の謎に迫ります。
開講日時 2018年6月4日(月曜)  13:00~14:30
テーマ 行基と霊木化現仏―聖樹の降臨
講師 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)
内容 今から1300年前の奈良時代に一人の僧侶がいました。穏やかさの内に何者にも屈しない深い強さを秘め、いつもまわりには人々が参集していました。老若、貴賎の別なく仏の教えを説き、人々のために橋をかけ、布施屋をつくり続けたその人を、人々は“行基菩薩”と呼び崇めました。この限りなく仏に近い聖人がある時、啓示を受けたと言います。原初より日本列島に根付いたカミ宿る深い森より美しい仏が立ち現れてくるヴィジョンとともに。植物からヒト形への神秘的なメタモルフォーシス。美術史家・井上正が“霊木化現仏”と名づけた御仏の森へ皆さんをご案内いたします。
開講日時 2018年7月2日(月曜)  13:00~14:30
テーマ 空海とイマージュ―“かたち”を媒介し変容する世界
講師 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)
内容 「真言秘蔵の経疏は隠密にして図画を仮らずんば相伝することあたわず。」空海が、『御請来目録』中に師・恵果の言として載せたこの一文は、密教におけるイマージュの役割を鮮やかに示しています。空海は、インド伝来の、“イマージュを媒介し真理に近づく実践的宗教”・密教によって、乖離し始めていた自然と人間の関係性を回復しようとしました。それは、全存在に聖性を見出し尊重する日本古来の基層信仰の力強い復権でもありました。空海にとって“かたち”とは何だったのでしょう?そのことを今一度考えてみたいと思います。
開講日時 2018年8月27日(月曜)  13:00~14:30
8月6日より日程が変更になっています。

開講日一覧

2018年 4月9日
飛鳥美術にみる“氣”の造形

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

  5月7日
蓮の真相―白鳳美術に潜む神秘の形象

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

  6月4日
法華堂根本曼荼羅と聖山―召喚された聖地

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

  7月2日
行基と霊木化現仏―聖樹の降臨

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

  8月27日
空海とイマージュ―“かたち”を媒介し変容する世界

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

8月6日より日程が変更になっています。
  10月1日
内に抱える自然の“力”―不動明王の位相

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

  10月29日
溢れ出す火と光―虚空蔵(こくうそう)という“仏”

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

9月3日より日程が変更になっています。
  11月5日
混交する現世と浄土―平等院鳳凰堂という異世界

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

  12月3日
すぐ隣にある“根”の国―地蔵菩薩と閻魔さま

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

2019年 1月7日
全ては自然の内に―一遍聖絵にみる人と自然

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

  2月4日
世界に満ちる聖性―青不動の奇跡

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)

  3月11日
聖者と“死”の変奏曲―涅槃図の深層

講師: 川野 憲一 (神戸市立博物館学芸員)